令和の時代に入り、児童生徒を取り巻く問題や課題がますます深刻化・多様化しています。そうした背景から、児童生徒の発達を支える生徒指導の在り方も変化し続けています。この記事では、教職大学院の学校教育課題サブプログラムの担当をする中で、生徒指導の重要性を日々感じる筆者が、12年ぶりに改訂された生徒指導提要をもとにしながら、令和の時代に求められる生徒指導について解説します。
1.生徒指導とは
(1)生徒指導の目的と必要性
生徒指導とは、子どもたちの人権感覚を育成し、社会の中で自分らしく生きられるように導く教育活動です。
生徒指導の指針となる文部科学省の『生徒指導提要』によれば、生徒指導を実践する際には「自己存在感を与える」「共感的な人間関係を育成する」「自己決定の場を与える」「安全・安心な風土を醸成する」という四つの視点が重要であるとされています。
生徒指導を通して児童生徒の人権感覚が育成されると、児童生徒が将来自立した際に自分を大切にし、他の人も大切にしてそれぞれが社会に貢献できるようになります。子どもたちが安心・安全な学校生活を送り、自己実現できるようにもなります。なお、ここでの子どもたちとは、小学校段階から高等学校段階までの児童生徒を指しています。
(2)『生徒指導提要』が12年ぶりに改訂
生徒指導は、上述のとおり文部科学省の生徒指導提要を指針としています。その生徒指導提要が2022年に、12年ぶりに改訂されました。これは2010年に作成されて以来、初めてのことです。
生徒指導提要の改訂には、いじめの認知(発生)件数や児童生徒の自殺数がここ数年で急増していることが影響しています。
出典:令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について p.22丨文部科学省
また、2013年には「いじめ防止対策推進法」によって、いじめが「心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」と定義づけられました。さらに2016年には「教育機会確保法」によりさまざまな理由で義務教育を受けられなかった子どもの教育機会の確保、2022年には「こども基本法」により子どもの権利擁護や意見を表明する機会の確保などが法律上位置付けられました。
こうした背景から、生徒指導をあらためて整理する議論が行われ、今日の生徒指導提要が作られています。現代社会における課題の大きさが生徒指導の重要性をますます高めているといえるでしょう。
2.生徒指導の構造と種類
(1)生徒指導の構造(2軸3類4層構造)
生徒指導提要によれば、生徒指導は、2軸3類4層に構造化できるとされています。