発達支持的生徒指導とは一体どんな「生徒指導」でしょうか? 文部科学省が2022年に改訂した「生徒指導提要」の中で発達支持的生徒指導の重要性が示されています。いま学校教育の中で求められている発達支持的生徒指導について、教育学研究者がわかりやすく解説します。
1.発達支持的生徒指導とは
発達支持的生徒指導とは、児童生徒自身が、自発的・主体的に自らを成長・発達させる過程を支える生徒指導の在り方を指します。すべての児童生徒を対象に、すべての教育活動の中で、日常的に進められる生徒指導の基盤となるものとして重要視されています。
発達支持的生徒指導の「発達」とは、児童生徒が自らを自発的・主体的に発達させることを尊重する姿勢を示した言葉です。発達支持的の「支持的」とは、児童生徒の発達をいかに支える働きかけをするか、という視点に立った言葉です。
発達支持的生徒指導の具体例としては、児童生徒への挨拶、声かけ、励まし、賞賛、対話など学校教育活動全体を通じた働きかけを重んじる教育が挙げられます。
文部科学省が2022年に改訂した「生徒指導提要」では、生徒指導の構造として「2軸3類4層構造」を示しました。
生徒指導の2軸とは、児童生徒の課題への対応の時間軸に注目したものであり、次の二つの軸があります。
- 積極的な先手型の常態的・先行的(プロアクティブ)な生徒指導
- 事後対応型の即応的・継続的(リアクティブ)な生徒指導
生徒指導の3類とは、生徒指導の三つの種類を指します。生徒指導をその課題性(高い・低い)と課題への対応の種類という観点から分けると、以下の三つに分類されます。
- 1類:発達支持的生徒指導:すべての児童生徒の発達を支える
- 2類:課題予防的生徒指導:すべての児童生徒を対象とした課題の未然防止教育と、課題の前兆行動がみられる一部の児童生徒を対象とした課題の早期発見と対応を含む
- 3類:困難課題対応的生徒指導:深刻な課題を抱えている特定の児童生徒への指導・援助を行う
生徒指導の4層とは、生徒指導の重層的支援構造を示すものです。
- 第1層:発達支持的生徒指導(すべての児童生徒が対象)
- 第2層:課題予防的生徒指導:課題未然防止教育(すべての児童生徒が対象)
- 第3層:課題予防的生徒指導:課題早期発見対応(一部の児童生徒が対象)
- 第4層:困難課題対応的生徒指導(特定の児童生徒が対象)
2軸3類4層構造のイメージ図(生徒指導提要(改訂版)p.17丨文部科学省をもとに筆者作成)
この構造から、発達支持的生徒指導は、すべての児童生徒を対象に常態的・先行的(プロアクティブ)に行われる日常的な生徒指導であり、生徒指導の基盤をなしているとイメージできるでしょう。
2.発達支持的生徒指導の重要性
文部科学省は2022年に「生徒指導提要」を12年ぶりに改訂しました。そこで示された生徒指導の定義は、次の通りです。