#海を渡る先生 金光邦朗さん
東京都八王子市立恩方(おんがた)中学校主任教諭の金光邦朗(くにお)さん(43)は、担当教科の理科以外に「国際理解教育」という担当を持っています。ベースには、2016年から2年間、JICA海外協力隊員として南太平洋の島国、ソロモン諸島の学校に派遣された経験があります。現地の人々との交流を通じて「派遣前から想像できないほど人を許せるようになった」という金光さん。「#海を渡る先生」第3回では、ソロモンで気づいた豊かさを胸に、生徒たちの価値観を揺さぶる実践を続ける金光さんの姿に迫ります。
大阪府出身。理科教諭。上越教育大学大学院博士前期課程修了後、東京都の公立中学校教員に。海外協力隊への憧れは、高校時代に恩師がウガンダへ、大学でもゼミ仲間が途上国へ向かう姿を見て膨らみ、2016年から2年間、現職教員特別参加制度を利用し協力隊に参加。ソロモン諸島ウェスタン州ムンダにあるコケンゴロ中高校に配属された。恩方中で国際理解教育を担当するほか、都内の中学校でソロモンでの体験を伝える講演活動もしている。
2024年9月のある日の5時間目、恩方中の音楽室にソロモン諸島の民族音楽が流れると、1年生たちの前にカラフルな衣装に身を包んだ一団が姿を現した。金光さんが顧問を務める陸上部の1年生たちだ。先頭で楽しそうに踊る金光さんにつられ、生徒も他の教員も笑顔になる。
ダンスの後、金光さんがロビアナ語で自己紹介をすると、「アラビア語!?」「英語!?」とざわざわ。「これはロビアナ語といって、これから話すソロモン諸島のニュージョージア島という小さな島で話されている言葉です。ロビアナ語をしゃべれるのは、そこの島に住む9千人しか地球上にいません。日本人で話せるのは先生だけかも」。金光さんの答えに、「すげー!」と声が上がった。
給食のメニュー「信じられない」
恩方中では、「総合的な学習の時間」の授業を各学年の「総合」担当の教員が分担する。行事を含め、進路学習や国際理解教育などの中から計画的に実施している。金光さんは5年前の同校赴任以来、ソロモン諸島での経験を生かして国際理解教育を担当してきた。
現在は2年生の「総合」のほか、1・3年生には依頼があれば年間で数時間、ソロモン諸島についての話をしている。自身の海外協力隊での経験を中心に講演をするが、タイミングによっては留学生を招いた講演会も開く。
国際理解教育の目的は、生徒が異文化への関心を持ち、自分の価値観を見直し、「自分にとっての幸せ」について深く考えるきっかけをつくることだ。1年生にとって初めての国際理解教育の授業だったこの日は、オリジナル資料とソロモンを特集したテレビ番組を使って、ソロモンの衣食住や文化、歴史、学校、人々の暮らしなどを紹介した。
特に盛り上がったのは現地の学校の給食の話題。食材の種類が限られており、メニューは……