小学校教員として荒れた学級を率先して受け持ち、授業が成り立つよう学級を変えていく手腕などから、「カリスマ教師」とも呼ばれた渡辺道治さん(41)。あまたの講演やセミナー、飛び込み授業で惜しみなくスキルと知見を伝え続けてきました。18年の教員生活に終止符を打ち、2024年に立ち上げたのが「教え方の学校」です。「編集長対談」と題するシリーズの1回目は、渡辺さんのこれからの挑戦や教員時代の驚異的な実践について、編集長の片山健志が聞きました。

#編集長対談

1.「教え方の学校」とは

――「教え方の学校」を始める前のご経歴を教えてください。

札幌市出身で、北海道教育大学を卒業後、初任が奈良県の私立小学校、次が札幌の公立小学校、そして愛知県の私立小学校と20年近く教員をしていました。

私自身が荒れたクラスで小3、小4時代を過ごしたこともあって、教員時代は積極的に崩壊クラスを受け持ってきました。そこでの授業や子どもたちの変わっていく姿が評判を呼び、講演やセミナーをお願いされるようになったんです。現在まで、講演・セミナーは国内外で通算500回以上、飛び込み授業は100回以上行ってきました。

教え方や学び方に悩み、もっといい方法を知りたいと思っている方はたくさんいる。そんな方たちに向け、YouTubeや音声配信サービスのVoicyでオンライン上にコミュニティーサロンも立ち上げて、私が積み重ねてきた知見や教育技術を共有しています。

――「教え方の学校」とはどんなもので、具体的にどんな活動をしているのですか。

名称から、私の教え方を学ぶところとイメージされるかもしれません。それは間違いではありませんが、目指しているのは学びの場を通して、参加してくれる大人たちがワクワクすることです。そのためにプリンシパル(校長先生)、プラクティショナー(実践者)、チャレンジャー(挑戦者)という三つの役割をつくりました。

プラクティショナー(実践者)は、実際に素晴らしい授業をやってくれる人。その授業の場を地域につくったり、人の縁をつなげたりしてくれるのがプリンシパル(校長先生)です。チャレンジャー(挑戦者)は、子どもたちをはじめ、誰かに還元するため何かを頑張って学びたい人たちで、学びのための費用は会員からのドネーションで提供します。

先生方って、実践発表をするのに無料で引き受けがちなんですが、ちゃんと兼業届を出して謝礼を受け取ってもらう。そして神輿(みこし)に乗る人だけでなく、神輿の担ぎ手を集める人、場を作れる人にもっとスポットを当てたい。何かを学びたい場合は、これまでだと自腹を切らなければならかったけれど、気持ちの上でも金銭面でも応援してくれる人々がいて、自分のチャレンジに対し背中を押してもらうことができる。

こうした仕組みをつくり、いろいろな人たちが混ざり合って、わいわい遊びながら、ワクワクと楽しんで学んでいる人たちの集まりの中に、学校という学びの箱に収まることのできない子たちも集まったとしたらいいですよね。

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渡辺道治さん

2. 驚異の学級通信発行

――学級通信のエピソードを教えてください。普通、多くても週1枚くらいですよね。講演でうかがった枚数はけた違いで、衝撃を受けました。

教員になって最初に痛感したのが自分の言葉の足りなさでした。子どもたちに届く言葉も浮かばない。そこで初任の1学期に13枚書きましたが、ある保護者から「もうちょっと出してくれませんか」と言われたんです。結構頑張ったつもりだったのに。恥ずかしいなと思って1年間の目標を100枚に決め、なんとか最終日に書き切りました。

2年目の目標は……