栃木県那須塩原市の中学校で、ジェンダー平等や多様性を意識した新しい制服が来年度から導入されることになり、お披露目された。県内の中学校では、女子がスカートかスラックスかを選べる制度がまずは広がった。今は多様性を意識した性差の少ない制服に改める動きが相次ぐ。

 新制服は同市の、黒磯北、黒磯、厚崎の3中学校共通。濃紺を基調としたブレザータイプで、男女同じデザインのジャケットだ。動きやすく、丸洗いもでき、シワになりにくいニット素材が使われているという。女子はスカートかスラックスかを選べる。男子のスカート着用も可能だ。

 各校の校章があしらわれたボタンは簡単に取り外しができ、前合わせも左右自由。首元のリボンやネクタイは、それぞれのスクールカラーをとりいれた。弟でも妹でも引き継げるうえ、校区を越えて譲ることもできる。

 新しい制服は、来年度に入学する1年生から着用することになる。

 これまで3校とも、男子が詰め襟の学ラン、女子はセーラー服だった。

 昨年夏から準備を進め、今年春に3中学校や校区にある6小学校の全児童生徒の世帯にアンケートを行ってデザインを絞り込んだ。

 9月23日、市内の大正堂くろいそみるひぃホールで、ファッションショー形式で新制服が披露された。来年春にそれぞれの中学校に入学する児童やその保護者らが見守った。

 ショーのモデルを務めた厚崎中3年の宮城遥さん(15)は「セーラー服に比べて、かなり大人っぽい雰囲気になった。スラックスとスカートを自由に選べるのは、今の時代にあった制服だと思います」と話した。

 黒磯北中の室井健太郎教頭(52)は、「新制服をきっかけに、愛校心をもって新しい時代の学校をつくっていって欲しい。多様性が求められる社会になり、価値観の違う人たちとも協力できる生徒になってもらいたい」と話した。

 県内では、壬生町にある壬生、南犬飼の2中学校も来年度から男女共通ブレザーで、女子がスラックスも選択できる新制服を導入する。那須塩原市の西那須野中は、2026年度の新制服の導入を目指し、検討委員会を立ち上げ、多様性に配慮したデザインの絞り込みを行っている。

 県内で、多様性に配慮した制服の導入の流れを作ったきっかけの一つは、鹿沼市立中学全10校で19年度までに女子のスラックス着用を可能にしたことだったと見られている。セーラー服の学校はなく、学校にとってスラックス採用は容易だった。

 宇都宮市では22年度までに市立中学全25校でとりいれられ、セーラー服の学校はなくなった。同じ時期に全県的に女子の選択制度が広がった。ただ、一部には既存のセーラージャケットに、スラックス着用もとりあえず可能にしたという学校もある。

 「スラックスの着用は、冬の寒さ対策や動きやすさなど理由は様々だが、導入のきっかけは多様性への配慮だった」(宇都宮市教育委員会)という。

 文部科学省が背中を押した面もある。15年に、心と体の性が一致しない性的マイノリティーの児童生徒への対応例をまとめ、全国の教育委員会などに通知した。22年には教員向けの手引「生徒指導提要」を改訂し、性的マイノリティーへの対応が初めて盛り込まれた。

 新制服を導入する栃木県内の中学校長は、「多様性への配慮が求められ、制服を変える必要性に迫られていた」と明かす。創立記念などを機に、多様性に配慮した新制服が導入される動きにつながったという。

 学生服メーカー大手のトンボによると、同社の制服を採用する全国の中学校・高校で、女子にスラックスを導入している学校は、15年に280校だったが23年には1963校に拡大。ここ2、3年では、新制服を検討する学校の9割以上が要望事項に「多様性に配慮した制服」を入れるという。全国でも同じ動きだ。

=朝日新聞デジタル2024年10月13日掲載