教員の業務内容については、多くの人が児童生徒を相手とする教科指導や学級経営をイメージされることでしょう。実際、教育職員免許状を取得するためには、大学でこれらの知識・技能を身につけなければなりません。しかし、いざ学校で働いてみると、それ以外にも多くの重要な業務があるものです。
1.校務分掌とは
校務分掌とは、学校ごとに設定された教育目標の具現化に向けて、校長が校務を分担するための組織を定め、教員に命じて処理させることを意味します。各学校の「校務」については、①教育課程の管理、②児童生徒の管理、③教員の管理・監督、④学校施設の管理、⑤事務書類・予算の管理、⑥学校設置者からの委任・命令に関する業務が挙げられます。これら多岐にわたる仕事について、校長がすべて一人で完遂することは難しいので、教員に分担することになっています。
2.校務分掌の重要性
もちろん、校務分掌には法的根拠があります。すなわち、学校教育法第37条第4項に「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」(中学校は第49条、高等学校は第62条に基づいて準用)と示されているように校長の校務掌理権が規定されています。また、学校教育法施行規則第43条には「小学校においては、調和のとれた学校運営が行われるためにふさわしい校務分掌の仕組みを整えるものとする」(中学校は第79条、高等学校は第104条に基づいて準用)とあるように、校長はそれぞれの分掌部門が効果的に機能するように教員の能力・適正を見極めていくことになります。
特に、教員は特定の学校の職員として発令されただけでは、どのような職務に従事するのか判然としません。校長から校務分掌組織に従って、具体的に◯年◯組の学級担任なのか、どの教科を◯時間担当するのかを命じられて、はじめて職務内容が明確になるものです。また、教員の主要な職務でもある教科指導や学級経営を成立させるためには、多くの教員の協力・支援が必要ですが、誰がどの職務を担っているのか明確でなければ連携しづらくなります。校務分掌は教員の円滑な職務遂行を実現させるために必要な仕組みです。
そして、校務分掌は自らの強みを発揮できる機会でもあり、各分掌組織には十分な経験のある主任(教務主任・学年主任・保健主事・研修主事など)が配置されていることから、協働していくなかで職務遂行能力も向上していくものです。また、就業当初こそ比較的軽微な分掌業務が割り当てられますが、近年では20代のうちに分掌部門の主任を経験する機会もあります。このように、学校全体の教育的意義を考えて職務を遂行していく姿勢を身につける意味でも、校務分掌は重要な役割を担っています。
3.【学校別】校務分掌の種類
それでは、各学校では具体的にどのような校務分掌が行われているのでしょうか。
もちろん、校務分掌の形態は学校の伝統・歴史、教育目標、学校の種類・規模、教員の構成・人間関係などの条件によって左右されます。しかし、校務分掌上の組織(部・委員会・係)については、おおむね①学習指導に関する分掌、②生活指導に関する分掌、③研修に関する分掌、④その他に分類することができます。
ここでは、学級担任や教科担任以外の分掌業務を、上記の組織ごとに概説していきます。