NPO法人「ストップいじめ!ナビ」は、いじめに関する調査研究と、当事者に向けた情報発信をしています。代表理事を務める評論家の荻上チキさんに、いじめ問題の現状と課題のほか、学校で取り組んでほしい、いじめ防止対策などについてインタビューしました。前、後編の2回にわたってお届けします。

荻上チキさん(おぎうえ・ちき 評論家、NPO法人ストップいじめ!ナビ 代表理事)
1981年生まれ。ラジオパーソナリティー。特定非営利活動法人ストップいじめ!ナビ代表理事、一般社団法人 社会調査支援機構チキラボ代表理事。著書に「いじめを生む教室 子どもを守るために知っておきたいデータと知識」(PHP研究所)、「災害支援手帖」(木楽社)、「社会問題のつくり方」(翔泳社)など多数。

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――ご自身が代表理事を務めるNPO法人ストップいじめ!ナビについて、設立の経緯と主な活動内容をお聞かせください。

団体を設立したきっかけは、2011年に発生した大津市中2いじめ自殺事件です。この事件はメディアでも大きく取り上げられて社会問題になりました。数多くの政治家やコメンテーターが再発防止に関する発言を行いましたが、大半は科学的とはいえない内容でした。その一因は、いじめに関する実証的研究が社会に共有されていないことでした。

翌2012年には衆院選がありましたが、その選挙活動では、各政党がいじめ対策に向けた法整備をマニフェストに掲げていました。法整備が進むのは喜ばしいですが、それぞれの政治家が法律に期待するイメージには大きな差があると感じました。

例えば、当時の文部科学副大臣は就任会見で、「いじめを無くすには、各学校にこわもての教師や武道の師範、警察OBを配置すればいい」といった発言をしていました。これはまずいぞと、各政党へのロビー活動を展開しました。

その後、ストップいじめ!ナビを団体化し、いじめに関する学術的な情報を社会に発信する、学校に講師を派遣していじめ対策の授業を行う、法整備に向けたロビー活動を行うなどの活動を始めました。それが出発点です。