全国の小中学生に1人1台の端末を配備し、学校に高速ネットワーク環境を整える「GIGAスクール構想」は、2021年度の本格スタート以降、端末の更新やICT(情報通信技術)環境の改善を図って次のステージへ進む「第2期」を迎えています。ICT活用における自治体間、学校間の格差の広がりが指摘される中、先行事例を共有して自らの取り組みに生かすことが重要となります。今回はGIGAスクール構想以前からICT整備に積極的に取り組んできた三重県いなべ市の例を紹介します。

南北に長い三重県の最北端に位置するいなべ市。人口は約4万5千人の自然豊かな市だ。ICT機器導入のきっかけは、同市誕生の歴史と重なる。

いなべ市は2003(平成15)年に員弁(いなべ)郡北勢町、員弁町、大安町、藤原町の4町が合併して誕生した。そのときの懸案事項の一つが、各町の児童・生徒のデータの共有だった。そこで学校間の情報共有を目的としたシステムの導入を検討し始めた。

市教育委員会学校教育課の水谷妙・課長補佐兼指導主事によると、その後は2009年から電子黒板と書画カメラを各学校に1台設置し始め、校内LANNの整備も始まった。2015年には小学校にあるパソコン教室のパソコンの入れ替えを検討した。その際、年に数回しか使われていないケースもあることがわかり、それならば子どもたちみんなが利用できるタブレット端末の導入を検討しようということになったという。

18年度には学校にiPad本格導入

「すぐにモデル校を選定し、三つのOS(Windows、Chrome、iPad)の比較・検討をしました。結果的に先生や子どもたちが一番有効に利用できたiPadを選定し、同時にICT支援員も配置しました」と水谷さん。研究指定校にiPadを導入したのは翌年の2016年度、授業での効果が確認できたため、2018年度に小学校(5、6年生。1~4年生は共用)、中学校、特別支援学級に本格的な導入を進めた。ここまでは全ていなべ市独自の政策だという。

驚くほど早いスピードだが、このように動けたのはなぜなのか。同市企画部情報課の伊藤正紀さんはこう語る。