ティーチングからコーチングへ、正解の教え込みから主体的な学びに伴走するものへ、教員の役割や授業のあり方の転換が叫ばれる中、学習評価のあり方がクローズアップされています。どのような気構えで評価に望めばいいのでしょうか。「未来の先生フォーラム2024」のオンラインプログラムで8月1日、「豊かな学びを創造する評価づくり―学習評価の本質と実践―」をテーマに講演する京都大学大学院准教授の石井英真(てるまさ)さんに聞きました。

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石井 英真さん(いしい・てるまさ 京都大学大学院教育学研究科准教授)
1977年兵庫県洲本市生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。専攻は教育方法学(学力論)。日米のカリキュラム研究、授業研究の蓄積に学びながら、学校で育成すべき資質・能力を構造化・モデル化し、それらを実質的に実現しうるカリキュラム、授業、評価、教師教育をトータルにどうデザインするかを研究。主な著書に、「再増補版・現代アメリカにおける学力形成論の展開」(単著・東信堂)、「今求められる学力と学びとは―コンピテンシー・ベースのカリキュラムの光と影」(単著・日本標準)、「授業づくりの深め方」(単著・ミネルヴァ書房)、「教育『変革』の時代の羅針盤 『教育DX×個別最適な学び』の光と影」(単著・教育出版)など。

豊かな学びを創造する評価づくり―学習評価の本質と実践―

主体性などのコンピテンシーを重視し育むような教育が求められる中、教授法だけでなく、児童・生徒の学習評価の考え方や方法も変える必要に迫られています。現在、「資質・能力の三つの柱」に基づき「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三つに整理・構成された観点別評価に関して、生徒の学習評価をどう考え、捉えていけばよいのかは、現場の先生方の大きな課題となっています。評価に関して悩んだり、評価することに負担感を覚えたりしている先生方も少なくないのではないでしょうか。

石井英真・京都大学大学院准教授

とくに難しさを感じているのが、「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という見えにくい学力をどう評価していけばよいのか、でしょう。

「形成的評価」と「総括的評価」の区別が重要

往々にして先生方は、評価について「子どもたちを全数調査し、客観的な証拠も残さなくてはならない」と思っています。しかし評価には種類があります。大きくは「形成的評価」と「総括的評価」で、この二つは分けて考えたほうがよいのです。

例えて言うなら、新しい料理メニューをお客さんに出そうというとき、味見もせずにいきなり提供することはほぼありません。途中で味を見て、「これでオッケー」と思ったものを提供し、お客さんの判断を仰ぐのが普通です。この途中段階での味見に当たるのが「形成的評価」、最終的にお客さんに出す料理が「総括的評価」です。両者が区別できていないと、ノート点検のような形成的評価で十分なものにも「A」「B」「C」といった評定をつけることになります。それを毎回やっていたら評価でパンクするのは当然です。

「形成的評価」と「総括的評価」は目的も、やり方も、テンションも異なります。自分がやっている仕事は形成的評価としてやっているのか、総括的評価としてやっているのかを整理し、区別することがまずは重要です。

観点評価の本丸は「思考・判断・表現」

評価づくりでもうひとつ重要なポイントは、「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」を切り分けて見ていくのではなく、「思考・判断・表現」から統合的に見ていくということです。

そもそも情意領域の評価は慎重を要します。「態度」だけを取り出して評価することにも無理があります。「主体的に学習に取り組む態度」は、それを目標に据え、形成的評価で伸ばしていく分にはよいものの、成績付けとしての総括的評価で見ていくことは、教化に陥ったり、児童生徒の態度偽装を招いたりする点で望ましくありません。

考える力を伸ばしていくには、問いについてじっくり考え、答えを見つけていくことが大事です。その間の試行錯誤や工夫といったさまざまなプロセスに着目し、「思考・判断・表現」の観点を中心に評価していくと、おのずと「主体的に学習に取り組む態度」も見えてきます。

授業態度のような入り口の情意ではなく、批判的に思考しようとする態度など、学習の結果として出てくる出口の情意を重視していくことで、評価に主観が入ってしまうのではないかといった懸念も避けられるでしょう。

評価とは子どもの成長を確かめ、次の学びにつなげるもの

今回のフォーラムで私が伝えたいのは、煩雑に考えず、評価の本質を捉えてシンプルに考えていきましょうということです。

評価の本質は、教師としてのプロの目で子どもを捉え、どう成長しているかを実際の姿一つひとつで確認していくことです。最終的に子どもたちはどう育ったのか、言い換えれば子どもの姿で勝負できるような教育ができているかどうか。そこを確かめるのが学習評価ですから、数値化して判定して終わりではなく、評価を通じて実践を改善するとともに、子どもたち自身が自分の学びをかじ取りして学習改善にもつなげていくものでなければなりません。評価で大事なことは児童・生徒の姿が見えるかどうか、この一点にあります。

成長の瞬間に立ち会えるのが教師の仕事の魅力であり、醍醐(だいご)味でもあります。生徒を知り、評価を通じてその成長に立ち会うことで、もっと生徒たちと関わりたくなっていく。そのような循環が生まれてくると、必ずやよい学校になっていくと思います。

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