文部科学省は、2022年度の「全国学力・学習状況調査」の一環で行った1人1台端末の利活用状況調査の結果を2022年11月にまとめました。調査は、全国の小中学校を対象に実施したものです。
文部科学省「1人1台端末の利活用促進に向けた取組について」(通知)
●1人1台端末を授業で活用しているか
端末を授業でどの程度活用しましたかとの質問に対し、小学校では「ほぼ毎日」と答えたのは全国平均で55.4%で、「週3回以上」と答えた学校と合わせると83.1%。多くの学校で活用が本格化してきたことをうかがわせました。中学校でも「毎日」が53.6%、「週3回以上」と合わせて79.9%でした。
ただ、地域ごとにつぶさに見ていくと、異なる様相が浮かび上がります。山口県では「毎日」か「3日以上」利用していると答えた小学校が合わせて95.8%と大半を占めたのに対し、岩手県の小学校では「毎日」か「3日以上」の利用は計49.3%にとどまり、「月1回未満」という学校も1%ありました。活用状況には都道府県間でかなりの差があります。
新潟市、熊本市は「2強」
政令指定都市を比べると、開きはさらに大きくなります。新潟市では小学校の93.3%が「毎日」活用し、それ以外はすべて「週3日以上」活用した、と答えました。熊本市の中学校も95.3%が「毎日」活用していると回答しました。GIGAスクール構想の分野では、この両市は「2強」と言われるそうです。一方、浜松市の中学校は「毎日」「週3日以上」を合わせても40.0%でした。
調査は昨年4月だったため、各校は主に構想が始まった2021年度の実績を基に回答したとみられます。岩手県教委学校教育室の担当者は「構想のスタートが前倒しされて本県では端末の整備が遅れた経緯があり、初年度は十分に活用できなかったのかもしれません」と話しています。コロナ禍の初期、同県では感染が抑えられ、オンライン授業の必要に迫られる学校がほとんどなかったことも、態勢作りが遅れた要因と考えられるそうです。
一方、新潟市教委では毎週水曜、構想に関わる部署の担当者が集まる「GIGAスクールミーティング」を開き、情報活用能力の育成を学校に進めてもらうための条件整備を進めてきました。その一つが、教員研修の充実です。初めはデジタルが苦手な先生のための研修をして慣れてもらい、徐々に上級者に対応した研修も作りました。もう一つは、各校の推進リーダーどうしが端末を通してつながって学校間の情報共有が進んだこと。各校から教委への相談も届きやすくなったといいます。
「教師が『端末を出して』というのではなく、子どもが学びを深めたいと思えば自由に使えるということが大事です。そんな意識で授業を組み立てる先生も出てきています。パイロット校の事例を共有し、良い方向へスパイラルが回るようにしていきたいです」。市教委学校支援課の丸山明生課長はそう話しています。
●場面ごとにどれくらい活用しているか
授業に何らかの形で使うという意味では活用が進んできたことが裏付けられたものの、どんなときに使っているのか場面を限定すると、活用している学校の割合は下がってきます。
子どもが「自分で調べる場面」で端末を活用しているかについて、「ほぼ毎日」か「週3回以上」活用している学校の割合は、小学校(6年生、以下も同じ)で平均計59.2%、中学校(3年生、以下も同じ)で同54.5%。これが「教職員と子どもがやりとりする場面」になると、小、中学校とも計42.1%と、「自分で調べる」よりも低くなっていました。
さらに「自分の考えをまとめ、発表・表現する場面」で「ほぼ毎日」「週3回以上」活用している学校の割合は、小学校で平均計37.5%、中学校同40.6%。「子どもどうしがやりとりする場面」では、小学校で平均計29.0%、中学校で同26.7%でした。
都道府県別にみると、島根県では「子どもどうしがやりとりする場面」で「ほぼ毎日」「週3回以上」活用している小学校は平均計13.2%しかなく、逆に「月1回未満」が同51.0%と過半数を占めました。中学校も同じ傾向で、「ほぼ毎日」「週3回以上」は平均計9.5%、「月1回未満」は56.4%です。島根県教委教育指導課の担当者は「特段の事情があったかはわからない。2022年度初めの調査なので、ネットワークの整備状況など前年度までの環境面の地域差が表れたのかもしれません」と言います。