富山県朝日町は今年度、中学校の英語学習に生成AI(人工知能)を取り入れている。英語が苦手でも人と話すより恥ずかしさを感じにくく、時間や場所を問わず練習できるのが利点という。国のパイロット校として、効果的な使い方や課題を検証する。
町立朝日中で7月、2年生の英語の公開授業があった。生徒が旅行会社員に扮し、旅のプランを提案することがテーマだ。
生徒らは、タブレット端末に向かい、対話型の生成AI「ChatGPT」と英語のやりとりを練習した。その後、生成AIと連携した人型ロボット「ペッパー」を客に見たて、求めに応じて観光スポットや食べ物を紹介した。
生徒の牧野祐介さんは、生成AIとの練習で「休日は何してる?」「ゲーム」などと会話が弾んだ。「仲間が1人増えた気持ち。恥ずかしさが減ってしゃべりやすく、楽しいので記憶に残る」と話した。
一般的な音声教材と違い、生成AIは話の趣旨に合わせて答え、やりとりを続ける。話す速さや声の高さを生徒が調節し、会話の内容を画面に文字で表示させて確かめることもできる。教える人がその場にいなくても、「壁打ち」のような練習が可能だ。
一方、授業の中では生徒の英語や意図がAIにうまく伝わらず、会話が途切れる場面が時折あった。
生成AIの利用については、情報の信頼性や学習意欲への影響といった懸念もある。文部科学省は今年度、全国66のパイロット校でメリット、デメリットを検証しており、県内では初めて朝日町の小中学校が指定を受けた。
昨年度の全国学力調査では、中学生の英語で「話す」問題の平均正答率(全国)が12・4%と、読み書きに比べ低かった。町教委はこの弱点の克服に生成AIが役立つと見込み、取り入れた。
木村博明教育長は公開授業にあたり、「生成AIの活用は手段で、目的ではない。子どもたちが様々な情報を適切・効果的に活用できる能力を育成したい」と述べた。
=朝日新聞デジタル2024年08月21日掲載