近年、広く耳にするようになってきた「包括的性教育」。これまでの「性教育」と何が違うのでしょうか。包括的性教育を実践するために大切な視点などを含め、ユネスコなどが公表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の日本語版翻訳者の一人である筆者が解説します。

1.包括的性教育とは

包括的性教育とは、性をめぐるさまざまな要素を含む教育です。具体的には、生殖や性的行動におけるリスク、性に関する疾病について教えることにとどまらず、性を「権利」として捉え、人権を基盤におき、コミュニケーションやジェンダー・セクシュアリティ平等、差別や暴力、社会的・文化的要因、メディアリテラシーなどを取り扱います。

古くは、アメリカ性情報・教育協議会(SIECUS)が「Comprehensive Sexuality Education(包括的性教育)」のガイドラインを1991年に発行しましたが、2009年に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)などの五つの国際機関が開発した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(以下「ガイダンス」)で包括的性教育の構造・内容が整理され、2018年には六つの国際機関によってその改訂版が発行されました。

このガイダンスは、英語、ロシア語、中国語、フランス語、スペイン語、ミャンマー語、タイ語など12カ国語で発行されており、国際的な潮流ともいえるでしょう。のちに日本語翻訳版も初版が2017年に、改訂版は2020年に明石書店より出版されます。これを機に、日本でも「包括的性教育」という言葉が広まり、関心も高まってきました。

なお、ここでは「包括的性教育」と「(包括的)セクシュアリティ教育」を同義で扱います。

(1)包括的性教育の目的

国際セクシュアリティ教育ガイダンス(改訂版)」では、包括的性教育の目的を「子どもや若者たちに、以下のような知識やスキル、価値観を身につけさせること」と記しています。

  1. 健康とウェルビーイング(幸福)、尊厳を実現すること
  2. 尊重された社会的、性的関係を育てること
  3. 自分の選択が、自分自身と他者のウェルビーイング(幸福)にどのように影響するのかを考えること
  4. 生涯を通じて、自分たちの権利の保護を理解し確かなものにすること

つまり、子どもや若者たちが性にまつわる自分たちの権利、社会の状況、構造を知り、そのうえで意思決定をしたり、自分たちの権利保障について意見表明をしたりして、自他の幸福を実現していくための手助けをすることを目指しているのです。

(2)性の権利とは

では、私たち(もちろん、子どもや若者たちを含む)の「性の権利」とはどのようなものでしょうか。これは大人にとっても難しい問いかもしれません。なぜなら、大人も性の権利についてしっかりと学んだ経験がないからです。

性科学の国際的な学会である「性の健康世界学会(WAS)」が発表している「性の権利宣言」では、性の権利について「性の権利はセクシュアリティ(性)に関する人権である」としたうえで、下記のように記しています。

  1. 平等と差別されない権利
  2. 生命、自由、および身体の安全を守る権利
  3. 自律性と身体保全に関する権利
  4. 拷問、及び残酷な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰から自由でいる権利
  5. あらゆる暴力や強制・強要から自由でいる権利
  6. プライバシーの権利
  7. 楽しめて満足できかつ安全な性的経験をする可能性のある、性の健康を含む、望みうる最高の性の健康を享受する権利
  8. 科学の進歩と応用の恩恵を享受する権利
  9. 情報への権利
  10. 教育を受ける権利、包括的な性教育を受ける権利
  11. 平等かつ十分かつ自由な同意に基づいた婚姻関係又は他の類する形態を始め、築き、解消する権利
  12. 子どもを持つか持たないか、子どもの人数や出産間隔を決定し、それを実現するための情報と手段を有する権利
  13. 思想、意見、表現の自由に関する権利
  14. 結社と平和的な集会の自由に関する権利
  15. 公的・政治的生活に参画する権利

私たちは、このような「性の権利」をもっているということです。このうち、第10項の「教育を受ける権利、包括的な性教育を受ける権利」には、次のように書いてあります。

人は誰も、教育を受ける権利および包括的な性教育を受ける権利を有する。包括的な性教育は、年齢に対して適切で、科学的に正しく、文化的能力に相応し、人権、ジェンダーの平等、セクシュアリティや快楽に対して肯定的なアプローチをその基礎に置くものでなければならない性の権利宣言

ここにある「教育を受ける権利」は日本国憲法にもあり、とくに子どもが教育を受ける権利を保障する義務が、国民(とくに国や大人)に課せられています(義務教育)。

これらを踏まえると、私たちには包括的性教育を受ける権利があり、とくに子どもが包括的性教育を受けられる(権利が保障される)ように、大人が教育環境を整えなければならないということになります。

2.「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」から考える包括的性教育


国際セクシュアリティ教育ガイダンス(International technical guidance on sexuality education)」とは、2009年にユネスコ、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、国連人口基金(UNFPA)、ユニセフ(UNICEF)、世界保健機関(WHO)が共同で開発した包括的性教育の国際的な指針です。2018年には国連女性機関(UNWOMEN)も加わって、最新の科学的根拠も反映させて改訂版を公表しました。

このガイダンスは、本文で「教育や健康などにかかわる政策立案者が、学校内外における包括的セクシュアリティ教育のプログラムや教材を開発し実践することを手助けするために作成されたもの」と記されています。

(1)包括的性教育で取り扱うテーマ

ガイダンスでは、包括的性教育で中心となる学習内容を、八つのキーコンセプトにまとめ、5~8歳、9~12歳、12~15歳、15~18歳以上の年齢グループに分けて、それぞれのトピックやキーアイデア、学習目標等を整理しています。

<包括的性教育の八つのキーコンセプト>
キーコンセプト1 : 人間関係
キーコンセプト2 : 価値観、人権、文化、セクシュアリティ
キーコンセプト3 : ジェンダーの理解
キーコンセプト4 : 暴力と安全確保
キーコンセプト5 : 健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル
キーコンセプト6 : 人間のからだと発達
キーコンセプト7 : セクシュアリティと性的行動
キーコンセプト8 : 性と生殖に関する健康

これは学習の順番を示すものではなく、関連のあるトピックやキーアイデアを組み合わせながら、すべての年齢グループにおいてすべてのキーコンセプトを扱うものとして構成されています。

また、それぞれのキーアイデアで学習目標とされていることは、「知識」「態度」「スキル」に分類されています。これも「相互的で互いに補強し合うプロセス」であるものとして提示されています。

(2)包括的性教育を構成する10の特徴

ガイダンスでは、包括的性教育の特徴として、以下の10項目を挙げています。

  1. 科学的に正確であること
  2. 徐々に進展すること
  3. 年齢・成長に即していること
  4. カリキュラムベースであること
  5. 包括的であること
  6. 人権的アプローチに基づいていること
  7. ジェンダー平等を基盤にしていること
  8. 文化的関係と状況に適応させること
  9. 変化をもたらすこと
  10. 健康的な選択のためのライフスキルを発達させること

第一に、包括的性教育は「性と生殖に関する健康、セクシュアリティ、行動、態度といったことに関する事実と科学的根拠によって構成される」ものです。この「科学」は「自然科学」だけではなく「社会科学」「人文科学」も包含されるものと考えられます。

そして、この教育は、幼少期から発達の多様性に対応させながら包括的な内容を継続的に積み上げていくもの(スパイラル型カリキュラムのアプローチ)として組み立てられます。

その内容は「若者たちの意識を高め、若者自身の権利を認識し、他者の権利を認めて尊重し、権利が侵されている人を擁護する」といった普遍的人権とジェンダー平等に基づき、たとえば日本では社会的文脈に合わせて具体的事例などを検討し、その関係性や影響を考えることが求められます。

これにより、自分たちの権利保障のために意見表明し、さまざまな行動を起こして社会を主体的に形成していけるような「個人とコミュニティのエンパワーメント、批判的思考スキルの促進、若者の市民権の強化」やライフスキルの発達が求められます。

(3)包括的性教育とこれまでの性教育と違い

文部科学省が全国の学校で推進している「生命(いのち)の安全教育」では、「水ぎでかくれるところは じぶんだけの たいせつなところ」「口・かお もたいせつだよ!」「水ぎでかくれるところは、ほかの人に見せたり、さわらせたりしないようにしよう」(小学校低・中学年)というように、身体における「たいせつなところ」を先に指定し、「見せたり、さわらせたりしない」という禁止のメッセージを送っています。

一方で、ガイダンスでは「誰もが、自らのからだに誰が、どこに、どのようにふれることができるのかを決める権利を持っている」と理解することが5~8歳のキーアイデアとして挙げられています。

そして、このキーアイデアを理解するための学習目標として、「『からだの権利』の意味について説明する(知識)」がまず立てられています。これは、子どもたちがさまざまな遊びや体験、絵本の読み聞かせ、友だちとの語り合いなどを通して、快や不快を感じ、理解し、自分(のからだ)にどんな権利があるのかを知り、権利保障や「同意」について自己主張できるようになる学びを構想したものです。

ガイダンスでは学習目標を「知識」「態度」「スキル」に分類していますが、たとえば「知識」では「説明する」「明らかにする」「列挙する」「比較する」など、「態度」では「表現する」「ポジティブに認識する」「気づく」など、「スキル」では「実際にやってみる」「省察する」「アクセスする」「社会に向けて呼びかける」「計画を立てる」などの言葉が使われています。

つまり、自己主張できるようになる学びとは、「覚える」といった受動的なものでもなく、「おもいやり」といった心構えの話でもないのです。もっと主体的な学習が目指されており、こういった「学習者ができるようになること(身につけること)」の包括性も重要です。

さて、5~8歳の学習目標である「からだの権利」の意味について、みなさんは説明できますか。先の「性の権利」と同様、おとなも「からだの権利」を説明することは難しいでしょう。

『からだの権利教育入門 幼児・学童編』の編著者の浅井春夫さんと艮香織さんは、「からだの権利」を以下の6項目にまとめています。意思決定のために十分な学習を最初に位置づけ、権利の主張までつなげているのが特徴です。

  1. からだのそれぞれの器官・パーツの名前や機能について十分に学ぶことができる
  2. 誰もが自分のからだのどこを、どのようにふれるかを決めることができる
  3. 親・おとなによる虐待や搾取、性的虐待や性的搾取から守られる(浅井修正〈性教協「性の基礎講座」2023年5月〉)
  4. からだが清潔に保たれて、ケガや病気になったときには治療を受けることができる
  5. こころとからだに不安や心配があるときには、相談できるところがあり、サポートを受けることができる
  6. 5までのことが実現できていないときは「やってください」「やめてください!」と主張できる

また、障がいのある子ども・若者たちへの性教育を研究する日本福祉大学の伊藤修毅さんは「性をタブー視する『だめ、だめ』の性教育ではいけない」とクギを刺しています(中国新聞|2022年9月27日付)。性的なことを否定している人に、子どもは性被害について相談しようとは思えないからです。

また「不快なことを不快とわかるには、握手をしたり、ハグをしたりする触れ合いの経験を重ねて、快いことを知る必要があります。そうすることで、嫌なときは嫌と言えて、嫌と言われたらやめないといけないことが学べるんです」とも述べています。

このように、包括的性教育を進めるためには、人権アプローチを基盤にして、これまでの子ども観、教育観の転換も求められます。

3.包括的性教育が必要な理由


ここからは、包括的性教育が求められている理由について見ていきましょう。

(1)包括的性教育を受けることは権利だから

WASの「性の権利宣言」にもあるとおり、私たちには包括的性教育を受ける権利があります。その他の「性の権利」も含めて、自分(たち)の権利が保障されているのか、もしくは保障されていないのかがわかるためには、まず自分たちにどのような権利があるのかを知らなければなりません。

学習なくして、健康の増進も社会環境の改善もありません。学習するためには教育を受ける機会や場が必要です。つまり、私たちの性の権利を保障するために包括的性教育が必要なのです。

(2)私たちの性(セクシュアリティ)は多面的だから

WASの「性の権利宣言」では、私たちの「性」を次のように説明しています。

セクシュアリティ(性)は、生涯を通じて人間であることの中心的側面をなし、セックス(生物学的性)、ジェンダー・アイデンティティ(性自認)とジェンダー・ロール(性役割)、性的指向、エロティシズム、喜び、親密さ、生殖がそこに含まれる。 セクシュアリティは、思考、幻想、欲望、信念、態度、価値観、行動、実践、役割、および人間関係を通じて経験され、表現されるものである。セクシュアリティはこうした次元のすべてを含みうるが、必ずしもすべてが経験・表現されるわけではない。 セクシュアリティは、生物学的、心理的、社会的、経済的、政治的、文化的、法的、歴史的、宗教的、およびスピリチュアルな要因の相互作用に影響される。性の権利宣言

一読しただけではすぐに理解しきれないように、私たちの性はとても複雑で多面的なものだとわかると思います。これまでの「性教育」で主に扱ってきた生殖やリスク、疾病は、私たちの「性」がもつ側面のごく一部でしかありません。

私たちが私たちの「性」を理解するためには、さまざまな側面から「性」を学び、そのつながりを捉えていかなければなりません。そのために必要なのが、包括的性教育です。

(3)私たちの性をめぐる社会環境が変化したから

私たち、とくに子どもたちの性をめぐる社会環境は、この30年で大きく変化しました。メディアの発展、コミュニケーションツールの進化によって、子どもたちが得られる情報が格段に拡大されたことが背景にあります。これらの変化に伴って、私たち、子どもたちの対人関係の持ち方も大きく変わりました。

また、性に関するさまざまな暴力が社会問題として認識されるようにもなりました。子どもに関しても、デートDVや性虐待被害、SNSを使った性暴力被害・加害の実態が把握されるようになってきたのです。そのなかで、刑法やDV防止法、ストーカー規制法、児童ポルノ禁止法なども改正されてきました。

さらに、これまで私たちの性の多様性は無視されながら社会が形成されてきましたが、この10年でやっとLGBTQ+の人たちの存在が可視化され、私たちの性の多様性とそれをめぐる社会的障壁が「問題」として認知されるようになってきました。

こういった社会状況のなかでは、子どもたちは、これまでの狭義の性教育ではなく、性をめぐるさまざまな側面を扱う包括的性教育を受ける必要があります。

ちなみに、文部科学省による小中学校の学習指導要領における性に関する学習内要は、人の生殖が小学校の理科に盛り込まれた1989年の改訂以来、ほとんど変化がありません(参照:月刊誌『教育』 2018年11月号 No.874「小学校学習指導要領は性をどう扱ってきたか?」)。

(4)ジェンダー・セクシュアリティ平等を実現するため

世界経済フォーラムが毎年発表する「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」では、日本はいつも男女格差の大きい国として評価されています。また、同性カップルの権利の法的保障をしていないのは、G7各国のなかでは日本だけです。

こういった状況を理解し、課題の解決に向けて考えることは、人権やジェンダー平等を基礎におく包括的性教育によって可能になります。

4.包括的性教育の推進に向けた今後の課題

ここからは、包括的性教育を推進するための課題やポイントについて解説します。

(1)包括的性教育を受ける権利を主張する

包括的性教育への社会的関心は高まってきています。たとえば、日本弁護士連合会は、2023年1月に「『包括的性教育』の実施とセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツを保障する包括的な法律の制定及び制度の創設を求める意見書」を取りまとめ、内閣総理大臣、内閣府特命担当大臣(男女共同参画)、文部科学大臣、厚生労働大臣、全国知事会、全国市長会及び全国町村会宛てに提出しました。

そこでは、学校教育において「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に準拠した包括的性教育を実施することや、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(SRHR)を保障する包括的な法律の制定、及び制度の創設をすることが国や地方公共団体に求められました。

また、公益財団法人日本財団「性と妊娠にまつわる有識者会議」は2023年8月に、子どもたちが、性や妊娠に関する適切な知識を義務教育で学ぶ必要性を訴える「包括的性教育の推進に関する提言書」を発表しました。

日本の義務教育で、包括的性教育を進めるための10の提言

引用:包括的性教育の推進に関する提言書 p.1|日本財団

さらに、子ども・若者をはじめすべての人が学校や地域で性について包括的に学べるように、包括的性教育推進法という法律の制定を目指す教員や研究者らが「包括的性教育推進法の制定をめざすネットワーク」を立ち上げ、署名活動をスタートさせました。

私たちの、とくに子どもや若者たちの包括的性教育を受ける権利を保障するためには、国や行政などにこのような声を届けていくことは大変重要です。それによって、学習指導要領に包括的性教育の内容が包含されたり、公的プログラムとして開発、推進されたり、それに携わる教員の研修や養成が行われるようになったりするかもしれません。

(2)教科横断的に連携して統合的に包括的性教育を進めていく

現在の学校のなかで、できることから包括的性教育を進めていくことも重要でしょう。

東京都教育委員会は「性教育の手引」のなかで、「性教育の内容は、体育科、保健体育科はもとより、家庭科、道徳科などの各教科、総合的な学習の時間・総合的な探究の時間及び特別活動に関連する内容が多くある。これらを相互に関連づけながら学校の教育活動全体を通じて行うことが必要」と説いています。

また、小中高の学習指導要領上、性に関する内容を位置づけられる箇所の一覧も示しています(生活科、社会科・公民科、理科・生物、家庭科、体育科・保健体育科、情報科、特別の教科道徳、総合的な学習の時間・総合的な探究の時間、特別活動)。

これらを担当する教員らが横断的に連携して、自分の教科で扱える内容を確認し合い、統合的な包括的性教育を進めていくことも可能です。ここに記載のない教科(たとえば国語科や美術科、音楽科、外国語など)の授業でも、性のことに関連させた学習を進めることもできます(たとえば、永田麻詠『性の多様性と国語科教育』明治図書、2022年などを参照)。

さらには、休み時間やその他の時間も含む学校生活全体で性の権利や健康について話題にしていくことも学習のきっかけになるでしょう。

(3)教育者側の研修や地域・コミュニティとの連携

包括的性教育を進めるためには、あらゆる教員が自分事として性についてを学ぶ研修などが必要でしょう。しかし、学校だけですべてを担うことは難しいのが現状です。

ガイダンスでも、「セクシュアリティ教育は、学校を基盤としたプログラムが、コンドームの配布、若者向け保健サービスの提供者へのトレーニング、親や教員の参画といったコミュニティ的な要素によって補完されているときに、最も強い影響がある」と、地域・コミュニティとの連携の重要性を説いています。

包括的性教育では、こういった教育者側の包括性も重要となります。地域の保健所、クリニック、NPOなどとも連携して、子ども・若者の実態やニーズを掴み、力を合わせて教育環境を整えていくことが求められます。

5.性は権利 まずは自分事として意識を


私たちはこれまで、「自分のからだを大切にしましょう」「自分の性を大切にしましょう」と言われ、または子ども・若者たちに言ってきたことが多かったと思います。しかしこれは、ともすれば自己責任論に陥(おちい)ることがあります。

これまでお話ししてきたように、性は権利です。したがって、問いかけるべきは「あなたは(自分は)大切にされてきましたか」「あなたの性/からだは大切にされていますか」ということでしょう。

もしこの問いかけに「いいえ」という答えが浮かんだなら、その環境を変えるべく声を上げる(主張する)ことが権利としてあるのです。そういった視点を、まずは自分事として意識してみてください。(編集協力スタジオユリグラフ・中村里歩)