文部科学省の2023年度の調査によれば、GIGAスクール構想で配備された「1人1台端末」を、小学校の授業で全国の政令指定都市で最もよく活用しているのが新潟市です。市立学校が採用しているiPadを、どのように使っているのでしょうか。市立大野小学校(西区)を取材しました。

大野小は創立150年を迎えた伝統校。全校生徒は約400人で、地域の中心校でもある。片山敏郎校長は昨年4月に着任する前の3年間、市教育委員会のGIGAスクール構想推進の担当主事として、計画づくりや指導をしてきた。「自分たちが作ってきた環境でどんな授業ができているか、今は外からではなく中に入って先生方と実践を進めているところです」と話す。

まずは4年生の社会科の授業を見学した。4年生の社会科には、自分たちの住む都道府県について学ぶ単元がある。これに基づき、県内にある市町村の特徴を調べ、魅力が伝わるロゴを作成して発表する、という授業を展開していた。

教室の前にある大型モニターに作品が映し出されると、子どもたちは感想を自由に伝え合う。

その後、作った子が前に出てきて、ロゴに込めた思いや背景を説明する。イメージを形にする創作力も求められる授業だ。

「絵が苦手な子も表現の幅広がる」

ある女子児童は新潟市の南隣にある「弥彦村」のロゴを作った。青っぽい背景に赤い鳥居が印象的な作品だ。「弥彦村には縁結びで有名な弥彦神社あります。弥彦山は夜景が美しいことでも有名で、日本の夜景100選にも選ばれています」と発表した。

「子どもたちは意外と自分たちの住んでいる地域について知らないものです。市町村のロゴを作る、というアイデアはAppleのウェブサイトにあった授業ガイドを参考に、自分なりにアレンジしました」。指導していた鈴木暁子先生はそう説明した。

ロゴの作成は、端末でお絵描きアプリの「アイビスペイント」を使って行う。それをフリーボードに共有し、意見などをふせんに貼っていく。子どもたちはそれぞれ、手元の端末に集まってくる作品や意見を一覧することができる。

鈴木先生は「絵が苦手な子でも、圧倒的に表現の幅が広がるのがいいところです」と端末を使うメリットを挙げる。ロゴ作りのコツなどはあらかじめ教えたそうだが、どの子の作品も完成度が高い。子どもたちのアプリを使いこなす能力に驚かされた。

自由に歩き回り、友人と教え合う

5年生のクラスでは算数の授業で、四角と円を組み合わせた図形の周りの長さを求める応用問題に取り組んでいた。先生が課題を出した後、子どもたちは端末を持って自由に歩き回り、友人たちと話し合ったり、教え合ったり。

解き方を子どもたちが発表する場面では、プレゼンテーションソフト「Keynote」のライブビデオ機能を使った。自分の端末の音声や動画を無線でモニターなどに共有できる「AirPlay」により、みんなの前に立って発表するのが苦手な子も自分の席にいながら発表ができる。前に出て行ったり、戻ったりする時間のロスがないため、授業がテンポよく進んでいくことを感じた。

6年生は社会科で、災害対策についてチームでラジオ番組を作るというユニークな授業が繰り広げられていた。地震や津波対策など教科書の内容を踏まえ、「避難できるように防災グッズを準備しておこう」「街の中の表示を確認しておこう」「家でどこに避難するのか話し合っておこう」など、自分たちができる防災対策を調べ、台本を作る。ナレーション担当と録音担当に分かれ、録音する場面で出番となるのが端末だ。

240322 大野小学校(6年社会)
災害対策のラジオ番組作りで、チームごとに録音などの作業にあたる6年生=2024年3月1日、新潟市立大野小学校

三つの授業に共通しているのは、先生が黒板の前に立ち、子どもたちは一斉に前を向いて先生の話を聞く、というオールドスタイルの授業ではないということだ。子どもたちは教室内を自由に歩き回って友だちと話し合っていた。気になることやわからないことは、各自が端末を使ってすぐに調べる姿も印象に残った。先生に頼ることなく、自分で調べる力は端末の使用によって高まっているようだ。

片山校長は「端末の活用は大前提です。今は学習者主体になるように授業観を変え、創造性を発揮できる教師集団を目指しています」と言う。そのために取り組んでいることの一つが、教職員にTeamsで配信する「デジタル校長便り」。日々教室を回り、「素敵な授業、いい事例」の写真を撮影し、創造的だと感じたポイントとともに送っているという。「先生たちにはいろんなことをチャレンジしてもらって、最後の責任は私が取る、というマネジメントをしたいと考えています」

子どもたちと端末の関わり方についても聞いた。片山校長は「保護者のアンケートを見ると、動画をみている時間が長い、という悩みはあります。今の時代は、自分で選択・判断したり、自己調整したりする力が必須です。学校と家庭が一緒になって、そのような力がつくようにしたい。それはこれからの課題でもあります」と述べた。