「人生100年時代」と言われる中、公務員の65歳までの定年延長が、2023年4月から段階的に進められることになりました。地方公務員である公立学校の教職員にとって、大いに気になる話題です。何がどのように変わるのでしょうか。教職員が関わる制度に詳しい日本教育事務学会理事の野川孝三さん(67)が解説します。

野川孝三(のがわ・こうぞう) 公立学校の事務職員として勤務した後に、組合活動に従事し、教育予算増額や教職員定数改善にとりくむ。分担執筆に『いまさら聞けない!日本の教育制度』、共著に『事務職員の職務が「従事する」から「つかさどる」へ』がある。

定年延長までの経緯

公務員の高齢期雇用については、2001年度から始まった公的年金の基礎年金相当部分の支給開始年齢の65歳への段階的な引き上げの対応として、60歳定年後の継続勤務のための新たな再任用制度が施行されてきました。さらに、13年度以降、公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢も段階的に60歳から65歳へと引き上げられることに伴い、無収入期間が発生しないよう公務員の雇用と年金の接続を図る必要が生じました。そのため、当面、退職共済年金の報酬比例部分の支給開始年齢に達するまでの間、希望する者については再任用するとの方針が13年3月に閣議決定されました。

昨年の国会で法改正


一方で政府は、人事院が11年に行った「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」を踏まえ、段階的な定年の引き上げの検討を行ってきました。

野川さん遠め写真
野川孝三さん=本人提供

こうした経緯から、昨年の通常国会において国家公務員法が改正され、公務員の65歳までの段階的定年延長が決定し、来年4月1日に施行されることになりました。これと合わせて、定年延長に関連する定年前再任用短時間勤務制度の新設等のための地方公務員法の一部改正も行われました。

想定される公立学校教職員の制度

公立学校の教職員を含む地方公務員の定年制度は、地方公務員法の規定により、国家公務員の定年を基準としてそれぞれの地方自治体の条例で定めるものとされており、各自治体の条例等で確定されます。ここでは、国家公務員の制度を基に、公立学校の教職員に想定される定年延長制度について解説します。

2年ごとに定年ゼロ、31年度完成

23~24年度は61歳定年、以降2年ごとに1歳ずつ定年年齢を引き上げ、31年度に65歳定年が完成します(表参照)。制度がスタートする23年度は、定年退職者は発生しません。23年度中に61歳となる人は、既に前年度に60歳定年で退職しているためです。その後も2年ごとに定年退職者がいない年度が生じます。このため各自治体においては、これまで以上に計画的な採用が必要となります。

教職員の定年延長のスケジュール(新)

定年延長後の給与などの条件は

国家公務員と同様であれば、当分の間、給料は60歳時点の7割となります。諸手当については、給料月額と連動して減額支給となる手当は、教職調整額、地域手当、時間外勤務手当、期末手当、勤勉手当などです。期末手当、勤勉手当の支給割合については、現行の再任用職員の支給割合ではなく、60