近年、日本でも「ギフテッド」と呼ばれる優れた才能を持つ子ども達への関心が高まっています。しかし、公教育において体系的な才能教育が行われてこなかった日本では、ギフテッドに対する理解は十分とは言えません。そこで、この記事では、ギフテッドの特徴や悩み、教員や家庭に求められることについてわかりやすく解説します。

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1.ギフテッドとは

ギフテッド(gifted)とは、一般に高い知能や特定の分野で優れた才能を持つ人のことを言います。「神様からの贈り物(ギフト)」という意味でギフテッドと呼ばれ、生まれ持った先天的な特性とされます。

ギフテッドの概念は恣意(しい)的なものであり、統一的な定義や判断基準はありません。そのため、国や地域によってギフテッドの認定領域や評価方法は大きく異なります。

例えばギフテッドに対する教育支援が盛んなアメリカでは、20世紀前半に知能検査が発明されたことで、当初は「ギフテッド=優れた知的能力者」とされ、知能指数の高さ(例えばIQ130以上など)がその主な判断基準となりました。しかし20世紀後半になると、心理学の進展とともに才能の多元性が意識されるようになり、現在では知的能力に限らず、芸術分野やリーダーシップ能力など、さまざまな領域がギフテッドの認定領域に含まれるようになっています。

そのため、ギフテッドかどうか認定するときも、IQの高さだけでなく、才能の領域に応じてポートフォリオ評価やチェックリストの活用など多様な評価方法が用いられます(具体的な認定領域や評価方法は州や学校区によって異なります)。

また、障害児教育との関係では、1980年代以降、才能と障害、特に発達障害を併せ持つ「2E(トゥー・イー)」と呼ばれる子どもたちの存在が認識されるようになり、アメリカを中心に才能の伸長とともに障害の補償を重視する2E教育も実践されています。

2.ギフテッドの特徴

一口にギフテッドといっても、その特性は一人ひとり違います。ただし、アメリカの才能教育に大きな影響を与えたコネティカット大学のジョセフ・レンズーリは、「才能の三輪概念」において、才能を

  1. 普通より優れた能力
  2. 課題への傾倒
  3. 創造性

という三つの要素の相互作用と捉えており、これは多くのギフテッドに共通する特徴と言えます。このレンズーリの考えに沿って、ギフテッドの主な特徴を具体的にご説明します。

(1)優れた能力

ギフテッドの多くは、その才能が幼少期に発現します。例えば、優れた数学的才能を持つ子どもの場合、幼稚園や小学校低学年の段階で平方根を理解し二次方程式を解くことがありますが、このような「早熟さ」がギフテッドの特徴として挙げられます。

また、小学生のうちに高校生の学習内容をマスターしてしまうなど、得意分野に関して「並外れた理解力」を持っていることもギフテッドの大きな特徴です。さらに、記憶力に優れていたり、文字や言葉を覚えるのが早く、豊富な語彙力で大人びた話し方をしたりする子どもも少なくありません。

このように、さまざまな認知機能の高さが、ギフテッドの才能を支えていると言えます。

(2)課題への傾倒

ギフテッドの子どもに共通する特徴として、興味のある事柄については「好奇心が旺盛」で、時間を忘れていつまでも夢中になって調べたり課題に取り組んだりできる「高い集中力」を備えている点が挙げられます。時には大人が驚くような質問をしながら、自分の興味関心がある事柄を追究していきます。

妥協を許さず、「完璧主義」なところもありますが、こうした好きなことにはとことん向き合う姿勢が、心理面での大きな特徴と言えます。

(3)創造性

一般に、才能の本質は創造性にあると考えられます。ギフテッドの子どもたちは、与えられた課題を単に素早く、正確にこなすだけでなく、これまでに得た知識・経験を生かしてオリジナルの新しい考えや作品、成果物を生み出すことがあります。

教科書には載っていないような斬新なアイデアで問題を解くなど、周囲を感心・感動させるような豊かな創造性・独創性こそが、ギフテッドの本質的な特徴と言えます。

3.ギフテッドと他の言葉との関係性

ギフテッドとの関連が深いものに発達障害やサヴァン症候群などがあります。そこで、この二つの関係性についても触れておきましょう。

(1)ギフテッドと発達障害

ギフテッドの特性のなかには、発達障害の特徴と似ている部分もあるため、発達障害と誤診されることがあります。

例えば、「社会的コミュニケーションや対人関係に困難を抱えている」「限定された興味関心を持つ」などからアスペルガー症候群や自閉スペクトラム症(ASD)と診断されたり、多動性や衝動性を理由に注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断されたりすることがあります。一方で、実際にこうした発達障害を併せ持つ2Eの子どもも存在します。また、読み・書き・計算などの習得に困難を抱える学習障害(LD)を併せ持つ場合もあります。

ただし、「ギフテッドの子どもがすべて発達障害を抱えているわけではない」ので、この点は誤解しないように注意が必要です。

なお、2Eの子どもは、才能が障害を隠したり、逆に障害が才能を隠したりするため、「その存在を正しく認識することが難しい」とされます。そのため、2Eの子どもに対して教育支援を行う場合は、才能と障害の両面から慎重に特性を把握し、その子の得意な学習方法を用いながら指導の個別化を図る必要があります。

(2)ギフテッドとサヴァン症候群

サヴァン症候群とは、精神障害や知能障害を持ちながら、ごく特定の分野に突出した能力を発揮する人や症状を言います。

サヴァン症候群は正式な医学名称ではなく、明確な診断基準はありません。先天性のほか、脳や中枢神経の損傷によって後天的に発症する場合もあります。先天性の脳機能障害が要因とされる自閉スペクトラム症の男性に多く見られるものの、未解明な部分が多いのが現状です。

サヴァン症候群の人の主な能力としては次のようなものがあり、「優れた暦計算能力、音楽や美術などに関する驚異的な記憶力・再現力が特徴」とされます。

  • 指定された年月日の曜日をすぐに当てることができる
  • 膨大な書籍を一度読んだだけで全て暗記できる
  • 円周率を何桁も覚えている
  • 曲を一度聞いただけで最後まで間違えずに演奏する
  • 一度見た風景を正確に描き起こせる

しかし、こうした特異な能力が必ずしも芸術や学問分野などでの創造的活動につながるわけではなく、サヴァン症候群だからといって直ちにそれらの才能があるとは言えません。

一方、ギフテッドは、先天的な特性であり、すでに優れた才能があることに対して用いられる言葉です。

このように、サヴァン症候群の人と一般的なギフテッドとの間には、さまざまな違いが存在します。

4.ギフテッドが抱える悩み

ギフテッドの子どもたちは、優れた才能を持って生まれた分、さまざまな悩みを抱えていることが少なくありません。ここでは、ギフテッドが抱える代表的な悩みを紹介します。

(1)学校の授業が退屈すぎてやる気を失う

優れた才能を持つ子どもたちにとって、自分の能力に合わない簡単すぎる授業を毎日受け続けることは、とても退屈なことです。授業を苦痛に感じながら、早く終わらないかと毎日教室の天井のシミを眺め続けた、というような話はよく耳にします。

(2)友人関係がうまくいかない

自分の興味を持っていることを周りにいる同年齢の子どもたちに話しても理解されず、かえって変人扱いされてしまうこともよくあります。そのため、話が通じる年上の人や理解してくれる大人たちと一緒にいることを好むギフテッドは少なくありません。その一方で、学校では仲の良い友達が少なく、孤独を感じることがしばしばあります。

(3)得意なことと苦手なことの差が激しい

優れた才能を持っているからといって、何でも得意なわけではありません。苦手科目の成績が悪かったり、人とのコミュニケーションが極端に苦手だったりと、得意なことと苦手なことの差が大きく、そのギャップに苦しむ子どもたちも大勢います。

(4)周囲の過度の期待や無理解に苦しむ

子どもに特別な才能があることはうれしいことですが、親が子どもに期待しすぎて必要以上にプレッシャーをかけてしまい、親子関係がうまくいかなくなることがあります。また逆に、教師が子どもの特性に応じた対応や配慮を全くしてくれないため、反抗的な態度をとってしまうこともあります。

周囲の大人たちに対し、自分のことを理解し寄り添ってほしいと願うギフテッドは少なくありません。

(5)鋭敏な感覚のため学校生活に支障が生じる

ギフテッドのなかには、独特の感性や一般の人よりも鋭敏な感覚を持ち、音やにおいといった刺激に強く反応してしまう子どももいます。そのため、学校生活においては、たくさんの話し声や給食の残飯のにおいなど多くの刺激に過敏に反応してしまい、つらい思いをすることがあります。

5.ギフテッドに対して教員に求められること

ギフテッドの子どもは、その特性ゆえに学校生活に多くの問題を抱えることが多く、不登校や引きこもりになる恐れも少なくありません。公的な支援制度が整っていない日本では、学校側も十分な対応をとることが難しい状況ですが、ギフテッドと思われる子どもを相手に教える場合は、次のような点に注意する必要があります。