広島市東区の市立早稲田小学校で2月、医師を講師に招いてがん教育の授業が行われました。企画したのは久保田聖子校長(58)。授業の最後に、久保田校長は自分が大腸がんを経験したこと、講師をした医師が主治医であることを子どもたちに明かしました。久保田校長が自身の経験から、授業を通して伝えたかったこととはなんでしょうか。話を聞きました。

感じていた異常 でも休めなかった教頭時代

久保田校長が大腸がんとわかったのは2020年10月。だが、血便が出るなどの異常を感じたのはさらに3年ほど前にさかのぼる。人間ドックでも毎年のように「要精密検査」となっていたが、当時は前任校の教頭として仕事に忙殺される日々。「検査のために1日使うのは……」と休むことをためらい、ようやく検査に行ったのは自分が校長になってからだった。結果はステージ3-Cの大腸がん。「5年生存率は50~60%、ほぼステージ4のがんでした」

すぐに手術、そして抗がん剤治療の日々。「いつまで生きられるのだろうか。親孝行したり、やりたいことをやったりするために仕事を辞めた方がいいのだろうか」と悩む久保田校長に、主治医の広島記念病院・矢野雷太医師が声をかけた。「仕事しながらがんと向き合うのがこれからの形」「自分が経験したからこそ、職員がそういう立場になったとき、管理職として働きやすい環境を作ってほしい」