学校が教育課程を編成するのにあたり、どの教科をどれくらい学ぶか、文部科学大臣が省令で定める基準「標準時数」をめぐる大森直樹・東京学芸大教授の寄稿の後編です。前編では、標準時数が時代とともに変化し、平日1日時数は1998年の省令改正に基づく標準時数以降、膨らみ続けていることをお伝えしました。後編では、現場の教員がそれぞれの時数をどう受け止めているか、意識調査の結果を中心に紹介してもらいます。
大森 直樹(おおもり・なおき)
1965年東京生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。専門は教育史。東京学芸大学 特別支援教育・教育臨床サポートセンター教授。同大学院では教育支援協働実践開発専攻を担当。著書に「子どもたちとの七万三千日 教師の生き方と学校の風景」(東京学芸大学出版会)、「道徳教育と愛国心 『道徳』の教科化にどう向き合うか」(岩波書店)など。

週時数と平日1日時数の変遷について、一番の当事者である子どもの証言を得ることが出来れば良いがそれは難しい。1人の子どもが経験する時間割はその過ごした学年の一つ限りであり、1人の子どもが同じ学年の複数の時間割について、自身の経験からの比較はできないからだ。

5.教員の経験から見えてくること

これに対して、教歴を重ねた教員は、各期における複数の標準時数にもとづく時間割について、自身の教職経験からの比較を行うことが出来る。そこで2022年10月に、「現職教員のこれまでの経験を活かして、標準時数制度について歴史的な比較と検証を行う」ことを目的とした予備的調査を行った。

対象は、小学校に在籍する現職教員で、59人に質問紙を届けて同年11月8日までに28人から回答を得た。28人は、すべて異なる市町村の教育委員会が設置した学校に在籍しており、教歴は最も短かかったのが8年6カ月(2013年4月~2020年3月と2021年5月~2022年10月)、最も長かったのが34年7カ月(1988年4月~)であり、いずれも複数の標準時数のもとで子どもを教えた経験を有していた。

28人の回答中、1977標準時数から現行まで5期にわたる標準時数を比較できた回答が8件、1989標準時数から現行まで少なくとも4期を比較できた回答が19件、1998標準時数から現行まで少なくとも3期を比較できた回答が24件、2008標準時数から現行まで少なくとも2期を比較できた回答が28件だった。