永岡桂子文部科学相は公立学校教員の処遇改善や働き方改革の検討を中央教育審議会に諮問しました。原則、残業代を支払わない代わりに月給の4%の教職調整額を支給する「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)をめぐる議論も本格化しそうです。諮問に先立ち、この問題の論点を整理したのが文部科学省の「質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会」でした。「#どうする給特法」第2弾は、研究会のメンバーで中教審の委員でもある埼玉県戸田市の戸ケ﨑勤教育長へのインタビューです。

戸ケ﨑 勤(とがさき・つとむ)
小中学校校長、戸田市および埼玉県教育委員会指導主事などを経て2015年から現職。第12期中央教育審議会委員。その分科会である初等中等教育分科会、教育課程部会、教員養成部会、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会のなどの委員や、文部科学省の「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議の委員など幅広い教育カテゴリーの委員を務める。教育長就任時から、①AIでは代替できない能力やAIを活用できる能力の育成、②産官学と連携した知のリソースの活用、③3K(経験・勘・気合)から脱したエビデンス重視の教育、④教育を科学すること、という四つのコンセプトを貫いた教育改革を推進している。

戸ケ﨑勤・埼玉県戸田市教育長インタビュー

――研究会での議論を振り返って、どんな感想を持ちますか。

1971年に制定された給特法により、公立学校の教師については超勤4項目(校外実習等・修学旅行等の学校行事・職員会議・非常災害時など)のみ超過勤務を命じることができ、時間外勤務手当を出さない代わりに給料月額の4%相当の「教職調整額」を支給する仕組みになっています。しかし、半世紀が経過し、現在の実態と乖離(かいり)しているという指摘があります。給特法の一部見直しは必要かもしれませんが、給特法の「精神」は残す必要がある、との考えをもって研究会に参加しました。

給特法の廃止、教材研究の自律性、裁量性の高い業務への残業代支給の是非などさまざまな議論が錯綜(さくそう)し、だれもが賛成する方策はないだろう中で、論点整理案は各委員の意見を丁寧に受け止めてまとめられていると思います。質の高い教師の確保とともに、処遇改善や教師不足をどうにかしないといけないという点には皆さんが注目した一方、教師を支える、育てる立場の管理職のなり手が不足している問題などについてはあまり議論がありませんでした。

管理職のなり手不足は深刻です。今は働き方改革をちゃんとやれ、と管理職が責められる場面も少なくありません。管理職を目指そうとする教師にすれば、プレッシャーにもなります。そこまでして管理職選考を受けたくない、となってしまいます。

残業の事前承認、トラブルのおそれ

仮に時間外勤務手当を支給する場合、残業というのは基本的に事前承認が必要で、何時から何時までこういう業務をしたい、と申し出るものです。