オープンサイエンスは、科学研究の成果やプロセスを広く公開し、誰でもアクセスできる状態を目指す取り組みです。この記事では、科学教育の専門家がオープンサイエンスの重要性、国内外の動向、課題や具体的な事例、学校教育で扱う価値について教員向けにわかりやすく解説します。
目次
1.オープンサイエンスとは
オープンサイエンスとは、科学研究の成果やプロセスを広く一般に公開し、誰もがアクセス可能な状態にすることです。
これまでの科学研究は、論文やデータが特定の学術雑誌や機関に限定されることが多く、一般の人々や異なる分野の研究者がアクセスするのは難しい場合がありました。オープンサイエンスの取り組みは、この制約を解消し、科学の透明性と信頼性を向上させることを目指しています。具体的には、研究データの共有、論文のオープンアクセス化、プレプリント(査読前の論文原稿)の公開などが含まれます。これにより、科学的知識の流通が促進され、研究の質の向上や社会への貢献につながると期待されています。
似たような概念として研究成果を誰もが閲覧可能な状態にするオープンアクセスがありますが、オープンサイエンスはより上位の包括的な概念であり、研究成果を生み出す途中から生み出した後までの全ての過程を含んでいます。オープンサイエンスについて考えるということは、科学の全ての過程について考えることだとも言えます。
オープンサイエンスとその他の概念との関係性(筆者作成)
2.オープンサイエンスの重要性
オープンサイエンスには、研究と社会の両方において重要性があります。
研究における重要性は、研究データやプロセスが公開されることで、他の研究者がその成果を検証しやすくなり、科学的な誤りや不正が減少する点にあります。研究に関する手続きやエビデンスが公開されなければ、その研究成果が本当に正しいのかを検証できず、科学的な誤りを防ぐことができません。オープンサイエンスは研究の透明性を確保するために欠かせない取り組みです。また、オープンサイエンスは研究の効率性を向上させます。なぜなら、既存のデータや知識にアクセスできることで、同じ研究を繰り返す無駄が減り、新しい発見やイノベーションが促進されるからです。
研究者ではない一般市民や社会にとってもオープンサイエンスは重要です。研究成果がオープンになることで、市民がそれらの知見にアクセスできるようになります。つまり、研究者でなくても正確な科学的知識にアクセスすることが可能になるのです。また、多くの科学研究には税金が投入されており、それらが適切に使用されているかを監視する役割を果たすためにも、研究のオープン化は欠かせません。
このように、オープンサイエンスの推進は研究者と市民の両方にとって重要な価値を持つものなのです。
オープンサイエンスは他の研究者・市民に対して重要な意味を持つ(筆者作成)
3.オープンサイエンスをめぐる国内の動向
オープンサイエンスは、日本においても重要な取り組みとして、近年注目されています。政府機関が実施しているオープンサイエンスの推進政策を三つご紹介します。