児童生徒の「未来の社会を切り拓く資質・能力」を育成するには、妥当性・信頼性の高い学習評価にもとづく指導要録の作成が欠かせません。この記事では、指導要録の記載内容や学習指導要領の改訂にもとづく改善点、記入例を紹介するとともに、指導要録の活用方法を公立学校の教職経験を有する大学教員が解説します。指導要録活用の可能性を考えるきっかけにしていただけると幸いです。

1.指導要録とは

指導要録とは、各学校が在学する児童生徒の学習の記録として作成する重要な文書です。

文部科学省によって通知された参考様式を学校の設置者(教育委員会など)が決定し、それに従って各学校で作成することになります。記載内容として「学籍に関する記録」と「指導に関する記録」があり、それぞれ保存期間が決められています。また、進学の際には、写しを進学先に送付します。

このように指導要録には、学校内の教員間における「指導機能」と対外的な「証明機能」の二つの機能があるとされています(参照:児童指導要録の活用|教育の小径)。

2.指導要録の記載内容

ここでは、記載内容である「学籍に関する記録」「指導に関する記録」について説明します。

(1)学籍に関する記録

「学籍に関する記録」は、住民基本台帳に基づいて教育委員会が作成する学齢簿の記載に基づいて、児童生徒の氏名や性別、生年月日、現住所、保護者の氏名や現住所、などを記載します。学年当初及び異動が生じたときには、その都度記載することが原則です。保存年限は、20年です。

(2)指導に関する記録

「指導に関する記録」は、児童生徒の氏名、学級、整理番号、各教科の学習の記録などを記載します。特に、各教科の学習の記録については、観点別学習状況の評価(学習評価方法の一つ。各教科の目標や内容と生徒の状況を照らし合わせて観点ごとに評価する。観点別評価)にもとづく評定を記載することになっています。保存年限は、5年です。

3.学習指導要領改訂に伴う指導要録の改善点

児童生徒の重要な記録文書である指導要録は、作成が義務付けられてからこれまで同じルールで運用されてきたわけではありません。時代やそれに伴う教育のあり方の変化に伴い、改善が加えられています。改善の内容については、学習指導要領改訂に伴う学習評価の変化と連動しています。

ここでは現時点で最も新しい「2016年度改訂の学習指導要領」における学習評価の考え方を整理したうえで、指導要録に実際にどのような改善が加えられたのかを見ていきましょう。

(1)2016年度改訂の学習指導要領における学習評価の基本的な考え方