#知りたいを聞く
性暴力は、表だって話題にしづらいもののひとつです。それでも、子どもがその被害に遭わないために、先生たちに知っておいてほしいことがある、と慶応義塾大学SFC研究所上席所員で、警察庁に勤務する傍ら性暴力の被害者支援や被害予防活動に取り組んできた小笠原和美さんは言います。子どもの性被害をめぐる近年の状況などとともに、小笠原さんに詳しく聞きました。
1994年警察庁入庁。2008年ごろから性暴力対策に取り組み、「函館性暴力被害防止対策協議会」の発足に尽力するなど、様々な立場の人や組織と連携して、地域の力で子どもたちを守る仕組みをプロデュースしている。
――子どもへの「性暴力」にはどのようなものがありますか。
子どもへの「性暴力」とは、具体的には下記のようなものが例に挙げられます。
これらの行為が子どもへの性暴力にあたるということを大人が認識しておくことはもちろんのこと、子どもたちに、自分の身体に守るべき部分があることや、同意なく身体に触れられたら「いやだ」「やめて」と言っていいことなどを、教職員や保護者など周囲の大人から伝えておくことが大事です。
――近年の子どもの性被害の状況について教えてください。
2024年3月に警察庁生活安全局が発表した資料によると、2023年の「児童買春」、「淫行させる行為」、「みだらな性行為等」により被害を受けた子どもは、1381人にのぼりました。ただ、この数字は警察が対応したものに限られるため、実際にはもっと多くの子どもが被害に遭っているはずです。
近年の傾向としては、「児童ポルノ」に関連する被害が増えています。23年の児童ポルノ事犯による検挙数は2789件で、14年と比較して1.5倍以上になっています。また、同年中に被害を受けた子どもは1444人で、14年から約2倍に増加しています。さらに児童ポルノを製造したり、所持したり、SNSやネット上にアップしたりといった理由で検挙された人を年代別にみると、10代の被疑者がおよそ3倍に増え、検挙された人数のおよそ半数を占めます。
違反態様別にみると「製造事犯」が半数以上を占めます。特に近年では、男の子が自身の性的な部位を撮影して友人に送ってしまう、SNSにアップしてしまう10代の事例も見られます。恋人や仲間内だからと気楽に送った結果、それが流出して、デジタルタトゥーとしてインターネット上に残ってしまうこともあります。子どもたちには、他人に裸を撮影して送るよう求めて送ってもらった時点で「児童ポルノの製造等罪」が成立する可能性があるといった法的知識もしっかりと教えておくことが必要です。
SNSに起因する事犯の被害のほとんどは、……