教育現場では今、PBL(プロジェクト学習)をいかに取り入れるかが重要な課題の一つとなっています。この記事では、PBLを授業に取り入れる参考となるように、PBLとは一体どのような学びなのか、小・中・高校ではPBLをどのように取り入れているのかなどを、教育学研究者がわかりやすく解説します。

1.PBL(プロジェクト学習)とは

PBL(Project-Based Learning:プロジェクト学習)とは、児童生徒が実社会で解決すべき課題を見つけ出し、その課題を自ら解決しようと計画を立てて取り組む学習方法を指します。20世紀初頭に活躍したアメリカの教育学者であるジョン・デューイの進歩主義教育や、ジョン・デューイの弟子とされるウィリアム・キルパトリックのプロジェクト・メソッドの考え方に基づく学習方法です。

PBLは、2017・2018年版の学習指導要領において推進される「主体的・対話的で深い学び」が実現できる教育方法として注目を集めています。

なお、PBLにはProject-Based Learning(プロジェクト学習)のほかに、Problem-Based Learning(問題解決学習)があります。どちらも課題や問題を解決するための学習ですが、Problem-Based Learningは、主に医学界で発展してきた学習方法で、医学的な症例を取り上げ、その問題を解決するための方途をグループで話し合いながら探る学習のことです(参照:『アクティブラーニングとしてのPBLと探究的な学習』p.5~23「アクティブラーニングとしてのPBL・探究的な学習の理論」)。

この記事では、いま学校教育の中で注目されているProject-Based Learning(プロジェクト学習)のほうに焦点をあてて紹介します。まずは近しい言葉であるアクティブラーニングやSBLとの違いから見ていきましょう。

(1)PBLとアクティブラーニングとの違い

PBLもアクティブラーニングも、学習者の主体性を促す教育方法です。

アクティブラーニングは、教員が一方向的に知識を教え込み、学習者が受け身(パッシブ)になる学びとは異なり、学習者が自ら学びたいと思えるような能動的(アクティブ)で、積極的な参加を促す学習方法のことです。

PBLは、教員が児童生徒に対して教えるべき知識・技能を一方向的に伝える、いわゆる講義形式の教師中心型(teacher-centered)の授業スタイルとは異なり、生徒中心型(student-centered)の授業スタイルで行われるものです。生徒中心型の授業は、生徒の学びを中核に据え、生徒の興味関心や実社会での経験を出発点にしながら、生徒が身に付けるべき知識・技能を能動的(アクティブ)に自ら学び取る授業スタイルです。

この点で、PBLはアクティブラーニングの一つと捉えることができます。

(2)PBLとSBL(教科に基づく学習)との違い

SBL(Subject-Based Learning:教科に基づく学習)は、各教科や科目という特定の学問分野に基づいて、系統立てて知識や技能を学ぶ方法を指します。