不登校の小中学生が増え続け、2022年度は30万人に迫りました。小中高生の自殺者数も高止まりしています。子どもたちのこうした異変に、何らかの前兆はあるのでしょうか。明治学院大学心理学部准教授の足立匡基(まさき)さんらの研究グループは約10年、ある市の公立小中学校に在籍する約1万人の子どもの心の健康やその要因などの調査を続けてきました。そこから見えたきたものとは。5月25日のウェビナーを前に、足立さんに寄稿していただきました。

【無料ウェビナー】思春期の子どものこころを理解する

足立匡基さん(あだち まさき 明治学院大学心理学部准教授)
専門分野は臨床心理学、発達臨床心理学。弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座および、公益社団法人子どもの発達科学研究所客員研究員を兼任。日本児童青年精神医学会教育の委員会委員。弘前大学大学院医学研究科附属子どものこころの発達研究センター在任時に、児童生徒数1万人規模のコミュニティーを対象とした児童思春期における心の健康問題の予防的支援体制の構築事業に従事。その成果は文部科学省「不登校に関する調査研究協力者会議」などで報告され、同省の「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」発出に当たってのエビデンスの一つに位置付けられている。

不登校の現状と対策

2022年度の国立・公立・私立の小・中学校の不登校児童生徒数が約29万9千件となり過去最多を更新しました。このような状況を鑑み、2023年3月、文部科学省は「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策『Comfortable, Customized and Optimized Locations of learning: COCOLOプラン』」を打ち出しました。下記のイラストは、COCOLOプランの目指す姿として発表されたスライドです。

誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)について. Retrieved April 25, 2024

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COCOLOプランが打ち出されてから既に1年が経過しましたが、日本全国の小・中・高等学校において、COCOLOプランに基づく実践は、まだまだ広がりをみていない状況にあるのではないかと思います。

文部科学省からは、これらの一部を可能にするための具体的なツールが示されているものの、なかなか積極的な姿勢をとることができずにいる自治体も多いのではないでしょうか。

これには、新しいものへの抵抗感や全国的に取り組みが少ない中でどのように進めてよいか分からない、といった疑問が関係しているかもしれません。

これらを解消し取り組みを加速させていくためには、「なぜ今このようなプランが打ち出されたのか」についての背景を知ることが重要ではないかと思います。これは、これらの方策をとる科学的根拠(エビデンス)を知る、ということにつながるものです。

私は上記のスライドに示された目指す姿のうち、学校を対象としたこれまでの調査研究から2と3に関する実践・研究知見の蓄積に貢献してきました。本稿では、その知見の一部について紹介し、5月25日実施予定のウェビナーにつなげられればと考えています。