文部科学省の調査によると、2022年度の小中学校における不登校者数は29万9048人となり、過去最多を更新しました。この状況を教職員や学校関係者としては、どう受け止めればいいのでしょうか。不登校当事者のためのメディア「不登校新聞」の編集長である茂手木涼岳さんにインタビューしました。前編では、取材を通して日々感じる、当事者たちの苦しみについてお伝えします。

茂手木 涼岳(もてぎ・りょうが)
1981年生まれ。図書館でのアルバイトと会社員を経て、不登校新聞社で事務アルバイトとして働き始める。その後、編集スタッフに。2022年に3代目編集長に就任。小学生の娘の父でもある。

――茂手木さんが編集長を務める「不登校新聞」とは、どんな媒体ですか。

「不登校新聞」は今から四半世紀前の1998年に創刊されました。当時、「学校へ行きたくない」という理由で子どもが自ら命を絶つという痛ましい事件が起きるなど、不登校が社会問題となっていたことが背景にあります。

楽しく学ぶ場所であるはずの学校が、子どもを苦しめている状況に対して、情報発信することで社会を変えていこうと、不登校の子どもやその保護者たちのリアルな声を伝える、新しいメディアを立ち上げました。以来、月2回の新聞を1号も欠かさず発行し続けています。

読者の大半は不登校の子どもの保護者です。当事者以外にも、全国のフリースクールや学校図書館、教育委員会などにも新聞をお届けしています。

私たち編集部は、何よりもまず、不安のただなかにある保護者に安心してもらうことが、その子どもの安心につながると考えています。苦しむ子どもを救うためには、回り道のように見えても、それが一番の近道だという考えです。

多くの保護者は、子どもが不登校になってどうすればいいか分からず、すがるように情報を求めています。とにかく読んで安心できることが最も大切だと思います。活動の原点には、情報は人を救うという信念があります。