不登校やいじめ、人間関係、心身の健康など、子どもたちをめぐるさまざまな問題を支援する「スクールソーシャルワーカー(SSW)」が注目されています。この記事では、スクールソーシャルワーカーの仕事内容や活動事例、必要な資格などを専門家が解説します。
目次
1.スクールソーシャルワーカー(SSW)とは
スクールソーシャルワーカーとは、不登校、いじめ、虐待など、さまざまな問題に直面している生徒たちの課題解決を図るコーディネーターのような存在です。具体的に、どのような役割を担っているのかを解説します。
(1)スクールソーシャルワーカーの役割
いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待、ヤングケアラーなど、児童生徒をめぐる課題は数多く存在します。その背景には、家庭、友人関係、地域、学校など児童生徒が置かれている環境の課題があるのです。
こうした課題解決のため、教育と社会福祉の知識を持つスクールソーシャルワーカーは、児童生徒の置かれた環境への働きかけや関係機関とのネットワーク活用など、多様な方法で支援を行います。
(2)そもそも「ソーシャルワーク」とは
「ソーシャルワーク」は、国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)が2014年に発表した「Global Definition of Social Work」によって、以下のように定義されています。
「ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと
解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義、人権、集団的責任、
および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論、
社会科学、人文学、および地域・民族固有の知識を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける」
内容を要約すると、ソーシャルワークとはすべての人の尊厳や多様性が尊重され、対等に扱われることに価値を置き、心身と社会的な幸福感がある状態を目指すことです。ソーシャルワーカーは、そのために人間関係や社会構造を変えていく活動を行います。
学校現場では、いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待、ヤングケアラーなどさまざまな課題があります。スクールソーシャルワーカーの活動では、児童生徒の主体性を大切にしながら、心身と社会的な幸福感を高めることを重視します。そして、「人と環境の相互作用」に注目し、両者の接点に介入して関係性を改善していくのです。
日本では、ソーシャルワーカーというと社会福祉士や精神保健福祉士などの有資格者で、福祉、医療、教育、司法などの現場で働くイメージがあります。本来の定義からすると、NPOなどで社会課題に取り組む活動をしている人の方が、ソーシャルワーカーに近いかもしれません。
(3)スクールソーシャルワーカーが生まれた背景
スクールソーシャルワーカーの起源は、20世紀初頭のアメリカにおけるビジティング・ティーチャー(訪問教師)にさかのぼります。訪問教師は、学業不振、貧困、障害、不登校など、さまざまな困難に直面している子どもの救済や支援に取り組み、学校と家庭をつなぐ役割を果たしていました。
訪問教師の活動は、訪問教師自身に教育と福祉という二つの分野の素養を前提としています。そのうえで、ケースワーク(個別援助技術)や精神医学、精神分析などの多様な知識が求められたことから、独自の専門職性を持つようになっていきました。そうした過程を経て、訪問教師は学校におけるソーシャルワーカーへと姿を変え、現代のスクールソーシャルワーカーの原型となりました(参照:『アメリカ教育福祉社会史序説 ビジティング・ティーチャーとその時代』p.7~28)。
(4)スクールカウンセラー(SC)との違い
スクールソーシャルワーカーとよく似た職業として、「スクールカウンセラー(SC)」という職業があります。
スクールカウンセラーは教職員と一緒に家庭訪問をすることがあり、スクールソーシャルワーカーもカウンセリングのような形で、相談支援を行います。
スクールソーシャルワーカーが引き受ける事案は、児童生徒を取り巻く環境への働きがけも求められます。そのため、課題改善に向けての難易度が高く、高い支援力を求められるケースが多くみられます。
2.スクールソーシャルワーカーの主な仕事内容
筆者の経験も踏まえて、スクールソーシャルワーカーの主な仕事内容を児童生徒、保護者、学校別にまとめました。なお、統計上の相談件数は、不登校、家庭環境、発達障害等、心身の健康・保健の順に多い傾向にあります(参照:「スクールソーシャルワーカー活用事業に関する Q&A」令和5年|文部科学省)。
(1)児童生徒への支援
児童生徒への支援は、主に以下の内容が挙げられます。
- 学校で面談、家庭訪問、オンラインでの面談による相談支援(傾聴とアセスメント)で、状況を把握して不安を軽減させる
- 児童生徒本人の気持ちを代弁(アドボカシー)して学校や保護者に伝える
- 病院、学校の教員との面談などに付きそう
- 福祉サービス、行政サービス、医療サービス、地域の民間支援団体の紹介など、地域資源の活用を提案してつなげる
(2)保護者への支援
保護者への支援は、主に以下の内容が挙げられます。
- 学校で面談、家庭訪問、オンラインでの面談による相談支援(傾聴とアセスメント)で、状況を把握して不安を軽減させる
- コントロール性を抑えるなど、児童生徒本人への接し方を提案する
- 保護者の気持ちを代弁(アドボカシー)して学校などに伝える
- 支援機関などに同行する
- 福祉サービス、行政サービス、医療サービス、地域の民間支援団体の紹介など、地域資源の活用を提案してつなげる
(3)学校への支援
学校への支援では、以下のような活動を主に行っています。
- 「ジェノグラム(家族関係図)」や「エコマップ(人間相関図)」などのマッピング技法を活用して、問題を分析して解決方法を一緒に考える
- 児童生徒の理解を深め、支援が必要な児童生徒・家庭を見つけて支援方法を模索するための会議のファシリテーションを担う
- 教員との家庭訪問際、生徒・保護者・教員間の話し合いなどの場において、中立的な第三者としてのファシリテーションを行う
- 児童生徒、保護者へのアプローチに関する相談に乗る
- 「スクールソーシャルワーカーとは」「ヤングケアラーとは」などの研修や、ロールプレイ、グループワークなどを実施する
- 福祉サービス、行政サービス、医療サービス、地域の民間支援団体の紹介など、地域資源の活用を提案する
3.スクールソーシャルワーカーの活動事例
ここでは、スクールソーシャルワーカーの活動事例をいくつかご紹介します。なお、活動事例は個人情報保護の観点から、筆者の経験をもとに年齢・性別・家族構成などは実際と異なる内容にし、複数の事例を一般化しています。
(1)不登校の生徒の支援
①概要
中学生のAさんは、学校に行こうとすると頭痛や腹痛などの身体症状が起こり、朝起きることも困難な状況でした。母親はひとり親で仕事をしており、Aさんは家でひとりで過ごしています。学校に行けない理由は、自分でもよくわからないという状態だったため、学校はスクールソーシャルワーカーに相談しました。
②支援方法
スクールソーシャルワーカーは、Aさんの母親と面談し、Aさんには家からオンラインで声だけで参加してもらいました。Aさんは緊張や不安を感じやすく、学校のことを話題に出すことも嫌な状態でした。家にいるときは、好きなゲームをしたり、絵を描いたりして落ち着いて過ごしていることがわかりました。その後、家庭訪問やオンラインでの定期的な面談を続け、学校の担任の教員と連携し、オンライン面談で雑談をするようにしました。
③結果
信頼関係が構築されていくなかで、勉強以外での学校に行くきっかけを提案したところ、一度学校に登校することができました。また校内フリースクールの利用を提案したところ、週に1回、学校にお昼から登校できるようになりました。
(2)いじめの被害生徒の支援
①概要
中学生のBさんは、元々友人たちのグループに属していましたが、ある日突然仲間外れにされ、集団無視やSNSでの中傷を受けました。Bさんは学校に行くのが嫌になり、不登校になったため、学校はスクールソーシャルワーカーに相談しました。
②支援方法
スクールソーシャルワーカーは、Bさんの自宅を管理職の教員と訪問し、保護者から話を聞きました。Bさんは、強い不安や孤立感、無力感を感じている様子でした。何度か家庭訪問するなかで、本人と面談でき、学校に復帰したいとの気持ちを確認することができました。
「いじめ防止対策推進法」に従って、加害者生徒への指導が行われました。そのなかで、 スクールソーシャルワーカーは校内会議で助言をしたり、加害者生徒達の心理的なサポートも行いました。
学校での保護者や本人を交えた話し合いでは、司会進行を担当。その後の面談で、本人が別室登校を希望したため、その旨を学校に伝えました。Bさんのことを心配している友人が複数いることもわかり、一緒に対話ができる場を設けました。
③結果
Bさんは、別室登校からクラスに復帰することができました。復帰後も定期的に面談し、心理的な支援を行っています。
(3)貧困・ヤングケアラーの支援
①概要
高校生のCさんは、父親が精神疾患で数年前から失業しており、母親がパートで家計を支えています。Cさんは家事やアルバイトで家計を支えており、修学旅行費などの支払いが困難になってしまいました。アルバイトに専念するために高校を辞めたいことを担任に相談したことをきっかけに、学校はスクールソーシャルワーカーの派遣を要請しました。
②支援方法
スクールソーシャルワーカーは、Cさんの家庭の経済状況や生活状況を把握するために、Cさんや保護者との面談を実施。父親が医療機関への通院をやめていたため、その事情を聴き、通院の再開と同行を提案しました。また、Cさんにはひきこもりの兄弟がいることがわかり、引きこもり支援の行政機関や信頼できる民間団体を紹介しました。修学旅行費に関しては、「生活福祉資金貸付制度」の就学支度費を紹介。手続きのサポートをしました。こうした活動と並行して、継続的に本人と面談し、心理的なサポートを行いました。
③結果
Cさんの父親は通院を再開し、「リワークプログラム」を受けることができました。Cさん本人も、修学旅行に参加することができました。スクールソーシャルワーカーは、担任の教員も交えて継続的に本人と面談し悩みを聴き、不安の軽減に努めています。Cさんは現在、高校卒業を目標に勉学に励んでいます。
4.スクールソーシャルワーカーが持っておきたい資格
スクールソーシャルワーカーの資格要件において、基本となっているのは「社会福祉士」「精神保健福祉士」の二つです。この二つの資格には、どのような特徴があるのかを解説します。
(1)社会福祉士
社会福祉士は、心身に障がいがある人や、生活に困窮している人、介護を必要とする人の相談に乗り、必要に応じて福祉・医療サービスを提案・紹介するのが主な役割です。高齢者福祉や障がい福祉、児童・家庭福祉など活動も幅広く、ときには主治医と連携しながら対象者をサポートします。
(2)精神保健福祉士
精神保健福祉士は、精神的な障がいや疾患を抱えている人を支援するのが主な役割です。医療施設や障がい者福祉施設、行政施設などに勤務し、病院への入退院での相談を受けたり、退院後の社会復帰の促進などを行います。
なお、二つの資格のうち、精神保健福祉士の方が合格率が高い傾向にあります。これは、社会福祉士に合格して共通科目が免除された状態で、試験を受ける人が多いためだと考えられます。
(3)資格の有無における報酬の違い
スクールソーシャルワーカーには、学校の教員や学校での相談業務についた経験や、児童福祉に関する行政機関での経験などが求められることがあります。ですが、募集要件に「社会福祉士または精神保健福祉士の資格を一つ以上有している」と記載されている場合のほうが、時給が高い傾向にあります。
例えば、2024年度の千葉県採用の場合では、社会福祉士または精神保健福祉士の資格があると時給3500円ですが、ない場合は2000円にとどまります(参照:令和6年度千葉県スクールソーシャルワーカーの募集について|千葉県教育委員会)。
スクールソーシャルワーカーは精神疾患の症状を訴える児童生徒、保護者と接する機会が多いため、両方の資格の取得をおすすめします。
5.スクールソーシャルワーカーが受けたい研修
スクールソーシャルワーカーとして活動するにあたり、受けておきたい研修を紹介します。研修は、スクールソーシャルワーカー着任前とスクールソーシャルワーカー着任後の二つに分けてまとめました。
(1)SSWとして着任前に受けたい研修
①スクールソーシャルワーカー基礎研修
「スクールソーシャルワーカー基礎研修」は、日本ソーシャルワーク教育学校連盟主催、文部科学省後援による研修です。対象は、スクールソーシャルワーカー着任予定の人や、ソーシャルワークの資格(社会福祉士、精神保健福祉士)のない人、スクールソーシャルワーカーと連携する教員などです(参照:スクール〈学校〉ソーシャルワーク教育課程認定事業の実施について|日本ソーシャルワーク教育学校連盟)。
②スクール(学校)ソーシャルワーク教育課程認定校
「スクール(学校)ソーシャルワーク教育課程認定校」は、日本ソーシャルワーク教育学校連盟が認定する研修です。ここでは、スクールソーシャルワーカーとして必要な知識と技術を学べます。
③スクールソーシャルワーク入門講座
「スクールソーシャルワーク入門講座」は、日本スクールソーシャルワーク協会が主催している研修です。スクールソーシャルワーカーの概要や機能、役割を学べます。
(2)着任後の資質向上のために受けたい研修
①スクールソーシャルワーカー連絡協議会の研修
「スクールソーシャルワーカー連絡協議会の研修」は各都道府県が主催する研修で、年に数回開催されます。活動しているスクールソーシャルワーカーを対象に、資質向上を目指した研修会や、実践報告会、情報交換会が行われます。
②スクールソーシャルワーカー全国実践研修会
「スクールソーシャルワーカー全国実践研修会」は、各都道府県の社会福祉士会が主催する研修会です。活動しているスクールソーシャルワーカーを対象に、資質向上を目指した講義や実践報告会、シンポジウムが行われます。
③その他に受けるべき研修テーマ
この他にも、教員向けの研修や多職種による合同研究に参加することで、教育現場や児童生徒、保護者の理解促進やスキルアップにつながります。それに加えて、スクールソーシャルワーカーのスキルを高めるために、以下のようなテーマの研修を受けることもおすすめです。
- 解決志向アプローチ
- ナラティブ・アプローチ
- 家族システム・アプローチ(家族療法)
- 傾聴
- ファシリテーション
- アンガーマネジメント
- マインドフルネス
- オープンダイアローグ
- 修復的対話
- NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)
- ソマティックエクスペリエンス
6.スクールソーシャルワーカーの六つの課題
スクールソーシャルワーカーが今後国内で普及するにあたって、どのような課題があるのでしょうか。筆者の経験や同業者の声、School Voice Projectが2023年に実施した「スクールソーシャルワーカーと教員向け緊急アンケート」を踏まえて、課題点をまとめました。
(1)教員との連携の難しさ
教員とスクールソーシャルワーカーが、お互いの役割や背景としている文化を分かり合う機会がなく、どう連携すればいいのかわからないという声があります。
教員とスクールソーシャルワーカーは共に多忙で、情報共有や気軽な相談が難しい状況もよく起きているようです。仮に連携できた場合も、教員の業務負担が増えてしまうという課題もあります。
(2)支援の制限
スクールソーシャルワーカーの活動は1回の派遣数に制限があり、学校に配置される場合でも、週2~3日のケースが目立ちます。週5日で学校に常駐している支援形態は、まだ少ないのが現状です。これによりスクールソーシャルワーカーの活動に制限が生じ、十分なパフォーマンスが発揮できなくなっているとされています。
(3)自治体の格差
自治体間での格差もあります。例えば、先進地域の福岡市では全中学ブロック、高校、特別支援学校にスクールソーシャルワーカーが配置されているのです。その人数も、2022年時点では市内に79人の配置と大幅に増えています(2010年6人、2016年25人)。
福岡市と同じように、市町村単位での人材の確保を行っている自治体もあれば、都道府県からの派遣に頼る自治体もあります。活動時間は自治体によって異なり、十分な活動が難しい自治体も少なくありません。
(4)勤務時間と契約形態の問題
スクールソーシャルワーカーは、勤務時間が短い場合が一般的です。、契約形態も非正規雇用が多く、本業としての生計維持が困難という課題を抱えています。そのため、時給の見直しや正規職員としての位置づけの検討も、必要だと考えられています。
(5)立場の弱さ
スクールソーシャルワーカーは学校にひとりしかおらず、孤立しやすい存在だとされています。現場において、他のスクールソーシャルワーカーに相談できないケースも珍しくありません。
他の関係機関と連携するときも、身分があいまいなため直接の情報共有ができなかったり、多職種連携の会議の際に声をかけてもらえなかったりもします。
(6)自分自身が加害者や対立関係に
不安やイライラなどのストレス反応が起きやすい児童生徒、保護者の支援は、支援者による二次被害が発生しやすい状況にあります。
例えば、不登校児童生徒の支援で家庭訪問をしたり、直接本人の声を聞いたりする必要があります。しかし児童生徒本人からすると、こうした支援自体に緊張し、不安や恐怖を覚える体験になってしまいかねません。
また、児童生徒や保護者がいない状況での会議は、当事者の気持ちが置き去りにされた支援を生みやすくなる場合もあります。一般的に、スクールソーシャルワーカーは教育委員会から派遣されて、学校の要請によって活動します。そのため、学校側の意見などに活動が引っ張られてしまうこともあるので注意が必要です。
7.教員と連携するための五つのポイント
スクールソーシャルワーカーの活動では、教員との連携が必要不可欠です。しかし、先ほども紹介したように、実際の支援の現場では教員とうまく連携できないという課題を抱えているスクールソーシャルワーカーが少なくありません。ここでは、教員とスムーズに連携するために大事なポイントを、五つにまとめて解説します。
(1)信頼関係の構築
教員との基本的な信頼関係なくしては、児童生徒、保護者支援ができません。まずは教員たちの困りごとを聴く姿勢を意識することが大切です。
一度、信頼関係が築けると、他のケースを任されたり、校内研修を依頼されたり、教員の悩みを聞くなかで助言をしたりと活躍の幅が広がります。
(2)チーム学校の一員という意識
スクールソーシャルワーカーと教員は、児童生徒の問題解決に向けて、チーム学校の一員として協力しあいながら取り組むことが必要です。
また、チーム学校の輪を広げて、多職種連携や保護者との連携も率先して行う役割もあるでしょう。「校長の指揮監督の元」と文部科学省からの通知にあるため、校長及び管理職(副校長、教頭、生徒指導主事など)の教員との連携も欠かせません。
(3)情報共有
児童生徒の問題解決に向けて、教員と情報を共有することが必要です。秘密保持義務があるなかで、児童生徒や保護者に対して情報共有の許可を得たり、教員同席での話し合いをしたり、集団守秘義務が発生する「要保護児童対策地域協議会」を活用したりと情報共有の工夫をしながら、児童生徒の問題に関する情報を共有し、協働で問題解決に取り組むことが求められます。
(4)相互理解
スクールソーシャルワーカーと教員は、相互理解を深めることが必要です。スクールソーシャルワーカーは、教員に自身の役割や活動内容を説明し、知ってもらうことが大切です。校内研修で「スクールソーシャルワーカー」について説明する機会も作れるといいでしょう。もちろん一方的に理解してもらうのではなく、教員の立場を理解する姿勢も必要です。
(5)専門性の活用
スクールソーシャルワーカーは、ソーシャルワークの専門性を活かして、児童生徒の問題解決に取り組むことが求められます。学校からの困りごとの相談を受けた際に、専門性をいかした提案をいくつか素早く行えると、今後の支援に向けた信頼関係が築けるはずです。
8.スクールソーシャルワーカーの今後の展望
スクールソーシャルワーカーは、人権を尊重し、対等性、多様性を重んじ、つながりを作りながら社会を変えていく使命を持った職業です。
社会では、パワハラ、セクハラ、アルハラなど、力関係の差を利用して相手の尊厳を傷つける行為により、加害者と被害者が生じています。ハラスメントを排除することは、被害者を減らすために必要な活動です。
しかし、昨今の日本ではちょっとした指摘や指示などがハラスメントとして認識される出来事が増えています。この傾向がエスカレートすれば、その人にとって必要なアドバイスが届かなくなってしまうかもしれません。
加えて、スマートデバイスの登場により、人々の交流のあり方も大きく変化しています。オンライン上で、人々がコミュニケーションを取ることが当たり前になる一方、対面での交流を通じて安心・安全を感じる経験が不足するようになりました。
その他、睡眠不足や運動不足、遺伝的な特性、過去の心の傷など、私たちは多くのストレスを抱えて生活しています。
そうした社会変化とストレス過多の現代においては、相手を傷つけない姿勢や、人との安心したつながりを作る存在が求められています。スクールソーシャルワーカーは、児童生徒が安心を感じる身近な大人のひとりとして、活躍できる可能性があると考えています。(編集協力スタジオユリグラフ・佐藤智朗)