公立中学校の部活動の地域移行をめぐって、神奈川県大磯町が、休日に地元のスポーツクラブから指導者を派遣してもらう独自の取り組みを始める。現職の教員も兼業届を出せばクラブに登録できるようにして、給与とは別に報酬を出すようにする。従来通り校内で部活をしたい生徒や指導に前向きな教員の希望に応える狙いだという。
部活動の地域移行を進める国の方針を受け、町は国の実践研究に手を挙げ、2022年度から地域のスポーツ団体と試行、検討を続けてきた。
ところが、校外での活動を経験した生徒や保護者からは「校外に移動するのが負担」「従来の中学校単位のチームで大会に出たい」などの意見が寄せられた。将来的に部活が有料化されることや地域に指導者がいない部活が消滅することを懸念する声もあったという。
■報酬は最長3時間で6千円
昨年教員を対象に実施したアンケートでは、部活の指導に前向きな意見も4割を超えた。「授業と違う子どもの側面が見られる」などの声があり、部活に高い教育効果を見いだしている現場の声も考慮した。
2校ある町立中学校の一つ、大磯中のソフトテニス部は県大会で男子団体3連覇の実績があり、中学部活への町民の愛着や期待も背景にあるという。
3月議会に提案する新年度予算案にクラブへの業務委託費約900万円を計上した。委託先は町で総合型スポーツクラブを運営する一般社団法人を想定。2校の23の運動部と9の文化部の休日の活動に、登録した指導者をスタッフとして派遣してもらう。元教員や民間の指導者らのほか、現役の教員の登録も認めるという。
本来、町立学校の教員の給与は県しか支払えないが、休日の部活指導を希望する人には事前に兼業届を出してもらい、他の指導者と同額の時給2千円、最長で3時間分6千円の報酬を町が負担する。
現在、休日に部活を指導した場合の県の手当は3時間以上で一律2700円なので、報酬増になる。町教育委員会の担当者は「十分ではないにせよ、部活への意欲がある教員のモチベーションを報酬面でも支えたい」。
■希望しないのに担当している教員は…
一方、指導者登録はあくまでも本人の意思に委ねる。希望しないのに部活を担当させられている教員にとっては、休日は休めることになる。
町教委によると、全国でも珍しい取り組みという。担当者は「部活動の地域移行は外部化の方向で進んでいるが、子どもや保護者には学校内で安心、安全に部活をしたいという願いも強い。教員の負担軽減を図りながら、学校内での枠組みを残す『大磯式』部活改革に挑戦したい」としている。
■部活動の地域移行
少子化によって廃部になり、子どもの選択肢が減ることへの対応や、教員の負担軽減のため、国は今年度から公立中学校の休日の部活の指導を段階的に外部に委ねる地域移行を進めている。当初は25年度末までの3年間でおおむね達成するとしていたが、自治体などから反対が出て方針転換し、明確な期限を設けないことになった。
=朝日新聞デジタル2024年02月08日掲載