「大きく、強く、間合いをよく見て、思い切り!」
ドンッと床を踏み込むと、竹刀がバチッ、バチッとぶつかる音に、「面、面、面、めーーーーん」の声が重なる。茨城県つくば市立谷田部東中学校の柔剣道場で8月下旬、剣道の練習に励む男女9人の生徒たちに、2人の男性指導員が声をかけていた。
生徒は全員剣道部員だが、この日行われていたのは通常の部活動ではない。保護者や学校外の指導者が管理する「DCAAクラブ」の地域部活動だ。DCAAは、学校がある洞峰地区から名付けた「Doho Cultural&Atheletics Academy」(洞峰地区文化スポーツ推進協会)の頭文字から取った。
2018年度に地域団体立ち上げ
剣道の場合、地元の谷田部少年剣友会指導員の冨田文男さん(74)らが学校に来てくれる。DCAAクラブの活動について、2年生の木村陽菜(ひな)さん(14)と沼尻愛さん(13)は「ベテランの指導者の方が礼儀作法も含めて教えてくれる」と話す。同じく2年生の川嶋織久さん(14)は「きめ細かく指導してくれるし、部活がない日にも練習できるので、良い仕組みだと思う」と評価する。
DCAAは2018年度に発足した。谷田部東中の部活動にはそれまで、日没が早い冬場は放課後わずかな時間しかできない一方、大会前などは過熱しがちという他の中学と同様の問題があった。当時の校長には教員の負担を減らしたい強い思いがあり、「部活動の安定」と「教員の働き方改革」の両面から部活動改革に取り組んだ。教員のプロジェクトチームで話し合い、出てきたのが学校外に組織を作るアイデアだった。
DCAAの立ち上げに携わり、現在も担当する大塚篤史教諭(44)は「外部の専門指導者に生徒の文化スポーツ活動を担ってもらう間、先生の負担はなくなる。生徒にとっても、顧問をやりたくない先生の指導を受けるよりよほどいい」とそのねらいを説明する。PTA役員や地区協力員らにお願いして入ってもらった組織には、学校長らも名を連ねる。種目ごとにスポーツクラブや競技団体の協力を得て、専門の指導者と生徒をつなぐ。現在の部活動のうち、11種目でDCAAクラブの活動が行われている。