#以上教育現場からでした

ICT(情報通信技術)が行き渡り、計算の技術や公式を身につけることの重要度を薄れつつあるいま、算数・数学を学ぶ意味とは何でしょうか。そこに正面から向き合ってきた一人が、慶義塾横浜初等部教諭の前田健太さんです。「愉(たの)しくて、子どもたちが夢中になる授業」を目指した取り組みの一端を、算数・数学観ととともにつづってもらいました。

前田 健太さん(まえだ・けんた、慶義塾横浜初等部教諭)
長崎県出身。慶應義塾横浜初等部教諭。京都ノートルダム学院小学校、国立学園小学校に勤務後、受験算数から離れた算数授業の実践に取り組みたいとの思いから現職に。子どもが愉しいと思える算数授業を目指して実践を重ね、日々の授業実践・板書をX(@mathmathsan)で積極的に発信。単著に「しかける!算数授業」(明治図書)がある。

算数・数学を学ぶ意味とは?

算数・数学の授業というと、普通の方々は計算ドリルのような問題集を黙々と解いているイメージを今も持っているのではないでしょうか。あるいは、前半は例題を使って解き方や公式を先生から説明され、後半はその類題で演習をするようなイメージかもしれません。確かに、「読み・書き・そろばん」と言われるように、昔はきっと計算技術を身につけることが社会を生きていく上で大切な技能だったことは間違いないでしょう。

ですが、今のAI時代、そういった算数・数学観のままで果たして良いのでしょうか。なぜなら、今はそういった知識・技能のようなものはネットで調べればすぐに出てきます。それもわかりやすくまとめられています。また、You Tubeなどで学習内容をとてもわかりやすく説明している動画も山ほどあります。だとしたら、わざわざ学校に大人数の子どもたちが集まって、算数・数学を学ぶ意味は果たしてあるのでしょうか。

私が考える算数・数学を学ぶ意味は、大きく二つあります。

一つ目は、試行錯誤をすることです。これは、自分がこれまで学んできたことを使って、目の前に出てくる未知の問題を解決していくことです。私たちは生きていくうえで、様々な問題に直面します。そういったものに対して、これまでの経験をもとに解決策を考える必要があります。そういったことを算数・数学でも経験してほしいのです。実は算数は、既習の知識や考え方を使えば、必ず次のものが解決できるような単元構成がされています。

どこかで見た解法や公式をそのまま当てはめても意味がないのです。スタートから、どうやったらゴールに行けるのか自分なりにいろいろと試していくことが大事です。時には行き止まりにぶつかることもあるでしょう。そういう失敗も含めて愉しむということ。自分の手で学びを進めると、いつの間にかすごいところまで到達していることもあります。

二つ目は、……