かけ声ばかりでなかなか進まなかったもののひとつに、中学や高校の部活動改革があります。スポーツ庁は2020年に「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革」を発表し、持続的な部活動と教員の負担軽減の両方の実現を打ち出しました。国レベルで具体策の検討が進められる中、岐阜県では変化の兆しが見え始めています。「以上教育現場からでした」と題して現役教師のリポートを紹介するこのシリーズ、初回は「斉藤ひでみ」のアカウントのツイッターで知られる岐阜県立高校教諭、西村祐二先生(42)です。

西村 祐二(にしむら・ゆうじ) 2016年8月から「斉藤ひでみ」名で教育現場の問題を訴え続け、国会や文部科学省への署名提出、国会での参考人陳述などを行う。共著に「教師のブラック残業」(学陽書房)、「迷走する教員の働き方改革」「#教師のバトン とはなんだったのか」(いずれも岩波ブックレット)、「校則改革」(東洋館出版社)がある。ドキュメンタリー「聖職のゆくえ」(福井テレビ)にも出演。

「来年度から、部活動を含めて学校の教育活動を勤務時間内で終了し、午後4時半には生徒を下校させます」。

そう校長先生や教育委員会から言われたら、教師の皆さんはどう思うだろうか。そんな方針を出したのが、岐阜県下呂市の中学校長会である。

行事の練習や委員会活動減らす

「教員の働き方改革を進めるため下呂市の全6中学校が新年度から、生徒の最終下校時間を午後4時半に統一する」「きっかけは、2020年度の教頭会での議論。働き方改革を具体化させていく中で、一番のネックになっていた部活動の在り方を見直すべきだという意見がまとまった。それを受け21年度、校長会で話し合い、午後4時半下校が決まった」(22年2月2日付中日新聞)「下呂の全6中学校で働き方改革 下校を午後4時半に統一」

この改革は、NHK「おはよう日本」(2月22日)でも取り上げられた。
放送では、行事の練習時間や委員会活動、掃除の時間などを減らすことで、授業時間や部活動時間を減らすことなく、午後4時半下校を実現できたと紹介している。試用期間実施後にアンケートを取ったところ、生徒の95%以上が午後4時半下校に賛成したというデータも紹介されていた。

一地域の挑戦かもしれない。しかしこれが働き方改革の成功事例となると、全国に広まっていく可能性もあり、大いに注目している。

シンポジウムの西村先生
働き方改革がテーマのシンポジウムで発言する西村祐二先生(右)。左は名古屋大学准教授の内田良さん、中央は岐阜市教育長(当時)の早川三根夫さん=2018年12月、本人提供

中学校だけでなく、岐阜県ではこれまでに教育委員会が旗を振り、高校でも部活動改革が進められてきた。

20年5月、「働き方改革を進めるため」に、岐阜県の全高校で部活動数を2〜3割削減するという方針が示された(NHK岐阜、同年5月25日)。私の勤める学校でも侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論が行われ、結果として2割以上の部活動を削減することに成功した。県教育委員会の方針がなければ、ここまでの急速な改革は不可能だっただろう。

教委も校長会も改革姿勢

なぜ、岐阜県は教育委員会や校長会が改革姿勢を前面に出してくれるのだろうか。内情はわからない。しかし岐阜県で勤める教師として、私には一つ思い当たる節がある。これまで誰にも話さなかったことだが、「時効」であると思い、以下にあるエピソードを紹介したい。

私はこれまで、「斉藤ひでみ」という仮名で、ツイッター等で発信を繰り返してきた。ツイッターを始めたのは、16年8月。そのころはまだ、部活動が社会問題と認識され始めたばかりで、それをどう解決するかという所まで議論が至っていなかった。