連載「#海を渡る先生」では、JICA(国際協力機構)の「教師海外研修」のプログラムに参加した先生が、その経験を生かして教育現場でどのような取り組みをしているかを紹介しています。今回は、8月のパプアニューギニアでの研修に同行したJICA 広報部 地球ひろば推進課の加藤眞佐美さんに、改めて海外教師研修の目的や概要、そして現地での研修の様子を伺いました。参加した先生方はそこで何を感じたのでしょうか。

延べ約3千人の先生が途上国へ

JICAの教師海外研修は、1960年代に始まった海外移住事業団の事業です。当時は、戦前からブラジルなど南米に移住していた日系人が現地で活躍しており、彼らとの交流を通じて海外の文化や教育を学ぶために日本の高校教師が派遣されるようになりました。現在では派遣先は全世界、対象は小中学校の先生へと広がり、これまでに延べ約3千人が参加しました。

同プログラムには、学校教員が対象の「一般コース」と、学校管理職や教育行政担当者を対象とする「教育行政コース」の2種類があります。毎年、一般コースには約100人、教育行政コースには約10人が参加し、帰国後、一般コースは授業実践を経て2月頃に報告会を開き、教育行政コースは公開報告会を実施します。

行き先は、JICA海外拠点の受け入れ状況と予算によって決まりますが、いずれも発展途上国です。2024年度はパプアニューギニアの他、ザンビア、ウガンダ、パラグアイ、ブラジル、ネパール、ぺルー、ラオス、モンゴル、パラオを訪れました。

本質を問い直すきっかけに

先生方には、現地の文化や教育を五感で感じていただきたい。発展途上国の現場で日本がどのような国際協力を行っているかを体験してもらい、現地での交流を通じて学んだことを日本の子どもたちに伝えてほしいと考えています。「自分の授業や指導に足りないものがあったのかもしれない」、「生徒に伝えたいことが見えてきた」という先生も多く、教育の本質を問い直したり、歩みを振り返ったりするきっかけになるのかも知れません。

一般コースの帰国後の授業実践では、子どもたちが発展途上国の問題を自分ごととして捉えられるような熱い授業が展開されます。先生方の思いが伝わるのでしょう、子どもたちもみんな、夢中になっています。見学するJICA職員も引き込まれてしまうほどです。

教師海外研修の一行を笑顔で出迎えるソゲリ小学校の子どもたち

今年の教育行政コースは、7月27日~8月2日の日程で、茨城、神奈川、埼玉、新潟、石川、兵庫、大阪などの府県教育委員会指導主事や校長・教頭ら10人がパプアニューギニアを訪れました。国立博物館・美術館、日本大使館、JICA事務所、国立教育メディアセンター、下水処理施設、教員養成校などを見学しました。中でも、首都ポートモレスビーから車で約1時間のソゲリ村にあるソゲリ小学校でのことは心に残っています。

勉強の目的に日本との違い

全校児童は約400人。JICA海外協力隊員2人の授業を見学したのですが、……