台風や大雨、地震などによる自然災害が多発しています。2011年3月の東日本大震災では、地震発生の時間帯から、学校で被災した児童・生徒や教職員も数多くいました。こうした災害を教訓とし、全国で防災教育への取り組みが進んでいます。ただ一方で、「専門知識がない」などの理由で悩む職員も少なくないようです。20年以上、防災教育に携わってきた、防災教育学会会長の諏訪清二さんに、防災教育に取り組む際のポイントを聞きました。

防災教育はハードルが高い?

――多くの教員から、「なかなか防災教育に取り組めない」との声が寄せられています

勝手に難しいと思い込んで、ハードルを上げてしまっている方が多いように感じます。私の経験を踏まえると、理由はおよそ次のようなものです。

  • 専門知識がないのでどう教えたらよいかわからない
  • カリキュラムが詰まっていて授業時間が取れない
  • 受験や進路と関係がない
  • 「自分は災害に遭わない」と考えている
  • 自分には災害体験がないので、自信をもって災害を語れない

私が防災教育に取り組み始めた約20年前、これらは正当な主張でした。しかし、それから様々な防災教育の実践が蓄積され、今ではどれも克服できる課題だというのが私の実感です。一つずつ検証していきましょう。

諏訪清二(すわ・せいじ)
1960年、兵庫県明石市生まれ。岡山大学教育学部卒業。1982年4月に兵庫県立高校の英語教員となり、35年間勤務。舞子高校が2002年に全国で初めて設置した環境防災科の立ち上げに携わり、12年間科長を務めた。災害を生き延びる方法にとどまらず、災害ボランティア、災害体験の語り継ぎなど、子どもたちや教職員、防災教育関係者を対象に活動している。中国、ネパール、スリランカ、トルコ、モンゴルなど海外での活動経験も豊富。兵庫県立大学客員教授(減災復興政策研究科)、神戸学院大学現代社会学部社会防災学科などいくつかの大学で非常勤講師。防災教育学会会長。防災学習実践研究会(自主勉強会)代表、防災教育実践交流会座長。

「ノウハウは広がっている」

――「専門知識がない」と悩む教員は、今も少なくないと思います

約20年前の防災教育は本当に手探りでした。ただこの頃、申し合わせたかのように、防災教育の世界でいくつかの出来事が起こりました。