教育政策の方向性を示す文部科学相の諮問機関、中央教育審議会(中教審)は、2021年1月の答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」の中で、「個別最適な学び」「協働的な学び」という考え方を打ち出しました。いずれもその後広がり、定着した感もありますが、特に「個別最適」についてはその意味するところなどをめぐってさまざまな議論があります。「個別最適な学び」「協働的な学び」をどうとらえたらいいか、背景に何があるのか、インタビューを通して探ります。まず2017年の学習指導要領改訂と、「令和の日本型学校教育」答申の両方に携わったキーパーソン、天笠茂・千葉大学名誉教授に聞きました。インタビュアーは、日本最大級の教育イベント「未来の先生フォーラム」代表理事の宮田純也、寺子屋朝日編集長の片山健志が共同で務めました。
「主体的・対話的で深い学び」とは何だったのか
宮田:「個別最適な学び」と「協働的な学び」の話に入る前に、まずは天笠先生も議論に加わっていた2017年、18年、19年の学習指導要領の改訂で示された「主体的・対話的で深い学び」についてお聞かせください。
天笠さん:ご承知の通り「主体的・対話的で深い学び」は、学習指導要領の改訂で提起された授業を改善する方向性であり、コンセプトとして打ち出されたものです。議論が始まった当初は「アクティブラーニング」という言い回しでした。
1950年、東京都生まれ。川崎市立小学校教諭、筑波大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学を経て、1982年千葉大学講師。97年より同大教授、2016年に同大特任教授。学校経営学、教育経営学、カリキュラム・マネジメント専攻。文部科学省の中央教育審議会初等中等教育分科会のメンバーとして、学習指導要領の改訂や令和の答申の議論に関わる。著書に「新教育課程を創る学校経営戦略 : カリキュラム・マネジメントの理論と実践」(2020年、ぎょうせい)や、「学校と専門家が協働する : カリキュラム開発への臨床的アプローチ」(2016年、第一法規)など多数。