文部科学相の諮問機関、中央教育審議会(中教審)が「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」の答申で打ち出した「個別最適な学び」「協働的な学び」に迫るインタビュー連載の2回目は、これらの学びが学校現場の実践やICT活用にどう結びつくのかを、答申に向けた議論に携わった天笠茂・千葉大学名誉教授に問いました。インタビュアーは「未来の先生フォーラム」代表理事の宮田純也、寺子屋朝日編集長の片山健志が共同で務めました。
学習観の転換へ 再チャレンジする答申
宮田:教育現場での実践はどのように変わるのでしょうか? 令和の答申では学習者を中心に置くことが示されていますが、一方で、過去と比較すると社会における学びの意義も変化しているように思います。
天笠さん:かつては教師が内容を伝え、生徒がそれを習得すれば「学び」でした。さすがに今はそれを「学校が果たす役割だ」という言い方はしません。
少し掘り下げると、平成の初めぐらいでしょうか。いわゆる「生涯学習」が語られ始めた頃のことです。「用意された学びの中身を伝えれば良い」という考え方に見直しを迫る動きが出てきました。生涯にわたって学ぶための基礎的な部分、学ぶ姿勢や学ぶ意欲を育てる大切さが説かれ、「学習観の転換」を図ろうとしました。しかし、学校現場に浸透するまで深めきれなかったというのが実情だと思います。
1950年、東京都生まれ。川崎市立小学校教諭、筑波大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学を経て、1982年千葉大学講師。97年より同大教授、2016年に同大特任教授。学校経営学、教育経営学、カリキュラム・マネジメント専攻。文部科学省の中央教育審議会初等中等教育分科会のメンバーとして、学習指導要領の改訂や令和の答申の議論に関わる。著書に「新教育課程を創る学校経営戦略 : カリキュラム・マネジメントの理論と実践」(2020年、ぎょうせい)や、「学校と専門家が協働する : カリキュラム開発への臨床的アプローチ」(2016年、第一法規)など多数。