「寺子屋朝日for Teachers」では11月20日(水)午後7時30分から、無料のオンライン勉強会「生徒に伝えたい介護のしごと リアルを知りキャリア教育に生かす」を開催します。介護という仕事の魅力が先生方を通して子どもたちに伝わるよう、介護に関わる現場で働く3人の方々と、講師の千葉商科大学教授、和田義人さんに語り合っていただきます。どんな方々なのか、その横顔を紹介します。

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谷口洋一さん(44)は介護の世界で仕事を始めて22年。山口県防府市を拠点にデイサービスやグループホーム、特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人「ひとつの会」で、在宅支援室の室長を務める。

甲子園出場を目指して野球に打ち込んでいた高校時代、左脚に大けがをして1週間ほど病院で入院生活を送った。同じ部屋には頸椎(けいつい)損傷で体を自由に動かせない大柄な男性患者がいた。何人もの看護師が「よいしょ」と声を合わせ、やっとのことで体勢を変えていたが、本人はそれが心苦しそうだった。

谷口さんの体格も大柄で、当時の体重は80キロぐらい。男性が言った。「あんちゃんみたいな大きな人が介護してくれたら、ええんじゃがなあ」。当時は将来も野球を続けたいと思ってきたが、そう言われたことで、恵まれた体や力を生かした仕事をしてみようと思い立ったという。

介護職員、生活相談員を10年ずつ経験し、現在はデイサービスセンターや訪問介護ステーションなど3事業の現場を束ねる管理業務にあたる。「そんなに甘いものではないことは就職してすぐにわかった。でも、介護は明日に希望をつなぐ仕事だと思っています」と話す。

京都府京丹後市の社会福祉法人「みねやま福祉会」常務理事の櫛田啓(たすく)さん(42)は、社会福祉を通じて社会を変えようとの思いを発表する「社会福祉HERO’S TOKYO 2018」で、「BEST HERO賞」を受賞した。全国社会福祉法人経営者協議会が、社会福祉のポジティブなイメージを広げようと、その年に初めて開催したイベントだ。

当時も今も語り続けるのは、児童、高齢、障害の分野の垣根を越えた複合型施設を運営する中で人々の交流を生み出す「ごちゃまぜの福祉」という発想だ。リハビリが嫌いな高齢の男性が、仲良くなった子どもが来ないのを心配して歩行器を使おうとした結果、要介護度が下がったこともあったという。「地域の中でみんなが支え合う『ごちゃまぜの福祉』には、人々を元気にする力があります」

241029 介護ウェビナー登壇者の画像(田中さん、和田さん)
田中楓さん(左)と和田義人さん

京都府城陽市の社会福祉法人「南山城学園」は障害者支援施設などを運営する。入社11年目の田中楓さん(32)は、企画広報課で新卒採用を担当する傍ら、大学など他団体と連携して入所者の社会参加を促したり、現場スタッフの声を聞いてPRに役立てたりと、施設の中と外をつなぐ活動も受け持っている。

ある介護職員から、一人の入所者と向き合うことで学びを得た経験を聞いた。担当する入所者が余命幾ばくもなくなり、やっと連絡が取れた保護者であるきょうだいは、延命治療を「望まない」と即答した。怒りの気持ちを抱いた職員は、管理職に諭されたという。「ごきょうだいの話、ちゃんと聞いた?」。目が離せない入所者ばかりに親の愛情が注がれ、きょうだいはずっと寂しい思いをしていたのかもしれない。支援にあたる上で背景までとらえることの大切さを思い知り、人として成長する機会になったという。

今回のウェビナーでメーン講師を務めるは、千葉商科大学人間社会学部教授の和田義人さん。大学卒業後、百貨店のグループ企業でバイヤーをしていたが、会社の新規事業として介護老人保健施設の新設に関わった縁から医療法人グループへ転身。介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、病院などの立ち上げにあたった後、大学教員へと2度目のキャリアチェンジを果たした異色の経歴を持つ。

さまざまな介護現場を見てきた和田さんには、在宅介護・施設介護の違い、介護サービスの種類の違いなどにより、働き手に求められる視点も、仕事内容も、一様ではないように映る。「人口減少、高齢化が今後さらに進む中、さまざまな人と関わって新たな価値をつくっていくことが重要になる。人に関わる介護という仕事の魅力を実践者の方々の話を通して伝えていきたい」と話す。

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