子どもたちが安心して教室で過ごし、学習に向かうためには、学級経営の充実を図ることが必要です。そこで、小学校勤務を経て、教員養成にかかわりながら小中学校の教育活動改善支援などに取り組む国立大学法人上越教育大学教授の赤坂真二さんに、学級経営で大切なことを聞きました。赤坂さんは9月14日に桜美林大学新宿キャンパスで開かれる「未来の先生フォーラム2024」のリアルプログラムで、「これからの学級経営を考える」をテーマに講演します。

赤坂真二さん(あかさか・しんじ 国立大学法人上越教育大学教授)
国立大学法人上越教育大学教授。19年の小学校勤務を経て2008年4月より現所属。現職教員のキャリアアップ、教員養成にかかわりながら小中学校の教育活動改善支援、講演や執筆活動をしている。学校心理士、ガイダンスカウンセラー・スーパーバイザー、日本学級経営学会共同代表理事、日本授業UD学会理事、NPO法人全国初等教育研究会JEES理事。著書に「明日も行きたい教室づくり クラス会議で育てる心理的安全性」「指導力の高い教師がやっているたったひとつのこと」(以上、明治図書)、「赤坂版『クラス会議』完全マニュアル 人とつながって生きる子どもを育てる」(ほんの森出版)など。

コロナ禍を経て改めて考えたい学級経営

私は小学校の教員として19年間勤務した経験があります。良い授業を作っていけば良い学級が作れると信じていました。教員になる時、そのように教わっていましたから。しかし、良い授業を作ることの難しさに直面しました。 

当時は学級経営という言葉も知らず、上手くいかない理由がなかなかわからなかったのですが、ある先生から助言いただいて、子どもたちとの信頼関係を築くという視点が自分には足りなかったのだと痛感しました。良い授業を作る前に、子どもたちが安心して授業を受けられる環境を作ることが大事だったのです。 

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赤坂真二さん

学級経営とは学習指導要領上での定義がなく、教員養成課程でも必修科目に位置づけられていません。しかし、実際に学校で働いている多くの先生が学級経営の大切さを口にします。定義がないので人によってイメージする「理想的な学級経営」も違ってきますが、ごく簡単に表現すると、子どもたちが学びやすく過ごしやすい場を作る、モチベーションの上がる環境を作るということです。 

価値観がある程度固定化されていた時代は、同世代が集まれば、お互いに共感しやすく人間関係を深めることも比較的容易でした。教室の中でつらさを感じている子に他の同級生がフォローするなど、集団としても力をつけやすかったと言えると思います。 

しかし、近年のインターネットやSNSの普及、そしてコロナ禍が学級経営を難しくしたと考えます。今は価値観が流動化し、人と人とのかかわり方が根本的に変わっている時代です。その中でコロナ禍があり、つながりや共感の機会が減少したことは、学級経営にも影響を及ぼしています。

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 安心・安全な場でこそ子どもは学ぶ

ただ、良い学級経営のためにすべきことといっても、難しいことではありません。いつもより音読を頑張った、いつもよりノートをきれいに書いた、など、子どもたち一人ひとりのさりげない努力や変化を見つけて声をかけることです。「不易」と「流行」、時代によって変わることと変わらないことを押さえることが必要です。

 ここ数年は、GIGAスクール構想を通じてICT(情報通信技術)の活用を促進するなど、新たな方針が示され、それに伴って授業の仕方も変化しています。しかし、学級経営の一番の基本は人権保障。教室で、誰も傷つけられることがないということです。「人権を守ること」が教室において一番大切なのは、昔も今も変わりません。

 例えば、手を挙げて大きな声で返事をして、30人もの同級生が見ている中で立ち上がって発表する。このようなチャレンジは、教室が温かい場だからできるのです。安心・安全を感じることができて、初めて子どもたちは学ぶことができるのです。 

学ぶということは、相手の立場に立って考えること。その人がどんな思いでそれを学んできたか、「視点取得」することです。その過程で相手に共感する気持ちも湧いてきます。今回の講演を通じて、よりよい学級経営に必要なことを、皆さんと共に考えたいと思います。 

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