教員の長時間勤務などを是正するため、大阪市教育委員会が2023年度から始める「働き方改革推進プラン」の改革案をまとめました。新たに導入する「ワークライフバランス支援員」「出欠管理アプリ」「採点支援システム」について、それぞれの担当者からポイントを聞きました。

ワークライフバランス支援員

同市教委が示した働き方改革の改定案で「最重点項目」に挙げた新しい柱の一つが「ワークライフバランス支援員」の配置だ。主に管理職を支援する要員と想定しており、なかでも同市の教員の職種で最も勤務時間が長い教頭職のサポートを念頭に置いている。

勤務時間2倍 管理職のなり手不足

「教員の長時間勤務の改善は、管理職不足を打破する意味で喫緊の課題です」と、同市の担当三四(さんし)知明さんは語る。市の調査では2021年度の教員の月平均時間外勤務時間は32時間12分。だが、これを教頭職に限ると58時間33分と2倍弱だった。ベテラン世代の定年に伴う若手教員の大量採用や、少子化に伴う学校の小規模化などで組織が脆弱化し、ベテランによる若手教員への指導が困難な状況が生じている。一方でタワーマンション建設などによって子どもが急増してマンモス校化し、学校の管理が煩雑になった地域もある。そのしわ寄せが教頭に及んでいる。

「以前は学校の朝の解錠と、放課後の施錠は教頭の仕事という文化がありました。そうした勤務時間が長くなる要因を少しずつ見直すようにも呼びかけているが、もっと根本的に業務の支援が必要だと判断しました」と三四さん。管理職の業務には、保護者からの要望や苦情への対応なども含まれており、若手教員から「管理職に魅力を感じない」という声も聞こえてくるという。三四さんは「管理職のなり手は常に不足していて、市内の中学校では校長のほぼ半数が再任用という状況です」と説明する。

同市はこうした状況を改善するため、2013年には一部の学校に校長と教頭のほかに副校長職を設け、2015年からは教頭の補助員の採用を開始。こうした負担軽減策によって、教頭職の時間外勤務時間は2018年度から21年度にかけて約6時間減少。「管理職選考試験の受験者も、わずかに上向き始めた」という。だが、教頭職の補助員は着任した時の単年度のみという運用になっており、「2年目以降もサポートが必要だという声が届いている。ワークライフバランス支援員はそうした需要に応える制度にしていきたい」と三四さん。

ワークライフバランス支援員の説明をする大阪市の担当者
大阪市教育委員会の三四知明さん(教職員人事担当)

シニア世代も視野に2桁採用の方針

新たに設ける「ワークライフバランス支援員」は、会計年度任用職員(単年度契約スタッフ)として採用する計画だ。予算編成の議論の結果にもよるというが、初年度となる23年度は2桁の人数を採用する方針だという。勤務時間は週30時間勤務を原則として、週5日で働く場合は1日6時間となる。おおむね週に4~6日間勤務して来客対応や文書作成などを行い、市教委からのアンケートに回答してもらうことなども想定している。

既存の教頭補助員を募集した際には、定年退職した元学校長ら管理職が応募してきた事例もあるといい、シニア世代も視野に幅広い人材を募集する予定だ。また支援員の配置は特にマンモス校など、人手が必要な学校へ優先的に行う方針だという。

また、名称を「ワークライフバランス支援員」とした点については、家事や子育ての負担が大きい教員、特に女性教員に管理職選考試験を受けてもらう狙いがある。国の第5次男女共同参画基本計画(2020年12月閣議決定)では、2025年に小学校・中学校の女性校長を20%に、教頭を25%にする目標が掲げられているが、同市では22年度実績で小学校長15%、教頭21.6%、中学校では校長8.6%、教頭8.3%だった。

三四さんは「業務と家庭生活の両立が困難にならないような支援を実施していきたい。予算との関係もあるが、どれだけ支援員の人材を増やせるかがカギだと思っている」と話す。

出欠管理アプリ

2023年4月から導入する「欠席連絡等アプリ」は、教員の日常業務の負担軽減を図るのがねらいだ。

「朝の学校業務を多忙にしている要因の一つが、欠席連絡を電話で受けることです」と、担当の坂田浩之さん。多くの学校では始業前の午前8時ごろに電話が集中するため、授業を準備する教員側には負担となり、保護者側も電話がつながりにくい不便さがあった。

そこに、新型コロナウイルスの流行を受けて始まった生徒の体温記録が加わった。生徒が紙に記入した体温を、教員がパソコンで入力したこともあったという。「こうした負担はICTの導入で軽減が図れるはずです。すでに市内でも複数の学校がアプリを導入しており、朝の電話対応や、生徒の健康観察の確認にかかる時間が減ったという効果も聞いている」と坂田さん。

欠席連絡アプリの導入について説明する担当者
大阪市教育委員会で欠席連絡アプリを担当する坂田浩之さん(写真左)と、志賀有花さん

すでに市内の複数校が独自にアプリを導入しているという。ただ、アプリを提供する業者によってサービスの内容にはばらつきがある。同市は23年春からは市内のすべての公立小学校・中学校に同じアプリを導入する方針で、業者を選定する際の条件もいくつか決めているという。

アプリに求められる機能

保護者からの児童・生徒の欠席連絡、健康状態(体温)の連絡ができること
朝の電話対応の負担軽減や、体温の一元管理などを可能にするため。

学校からの手紙配布
これまで学校で手紙を配った日に欠席した子どもがいた場合は、教員や欠席者の自宅に近い子どもが届けるのが一般的だった。手紙をデータ化し、ファイル形式で保護者に届けることで、子どもが手紙を保護者に渡し忘れてしまったり、保護者が紙を紛失したりといったトラブルも防げるという。「アプリで送信すれば、保護者に直接通知が届くだけでなく、過去の通知をアプリから確認することもできるようになります」と同担当の志賀有花さん。

懇談や面談の出欠アンケート機能
保護者が学校を訪れる懇談や面談にあたっては、あらかじめ保護者との日程調整が必要だ。これまでは手紙を学校と家庭を往復する形で調整する必要があったが、アプリを導入すれば学校側が示した日程に、保護者が希望日を入力するだけで済むようにする。

アプリに懸念の声も