GIGAスクール構想のスタートから半年がたちました。小中学校などに配備された、子ども1人1台のパソコンやタブレット端末の利用は順調に進んでいますか? 出遅れた学校や地域はどうしたらいいでしょう。現状や構想が実現に至った背景について、教育の情報化に関する文部科学省の会議の座長などを務める堀田龍也・東北大学大学院情報科学研究科教授(教育工学)に聞きました。  

なぜ今、GIGAスクール構想が始まり、子どもにパソコンを配ることになったのか。そこが理解されていないと、これからどうしたらいいかにつながらないでしょう。

人口減少が今後さらに進み、人手不足はますます深刻になります。一人ひとりが抱える仕事が増え、効率的に仕事をしていくことが欠かせません。ところが学校では、ちょっと前まで個人情報が漏れたら困るという理由で教師のパソコンからインターネットの検索すらできないところも珍しくなかった。子どもとのやりとりで対面が効果的なのは自明ですが、そのために対面から離れられず、デジタルを有効に生かしてこなかった。結果として先生の仕事はいっそう忙しくなり、先生の感覚はどんどん世間ずれしていきました。 

学校の働き方改善にもICT

まずはネットで調べて必要な情報をうまく取り出し、整理して意思決定に生かす。これから訪れる時代では、そういう情報活用能力がないと、仕事をしていくのは難しくなります。たとえば、介護を受ける人が増えると、起き上がるのを手助けして角度が自動で変わるベッドとか、外が明るくなると自動で開くカーテンがあれば便利ですよね。でも、そんなICT(情報通信技術)機器は、ある程度仕組みがわかっていないと使いこなせません。プログラミングの学習が学校に入ってきたのには、そんな事情があります。

堀田教授(リモート取材)
オンラインでインタビューに応じる堀田龍也・東北大院教授。右は筆者

情報活用能力は、どの教科にも関係するけれど、どの教科でもない。言わば、横断的な力です。それが先生たちに必要なものと位置づけられ、改正される教員免許制度にも盛り込まれそうです。「ブラック」と言われる教員の働き方を改善するためにもICTを生かそうという機運が高まりました。いろんな動きがつながって、GIGAスクール構想へとたどり着いたのです。

学校のICT整備は本来、学校設置者、公立であれば主に市区町村の役割です。だれにとっても必要な力を育てるのに差があってはいけないということで、小中学生の端末整備のお金の3分の2を国が出すことが2019年12月に決まりました。ここにコロナ禍が起きたため、4年かけて進める予定が一気に早まりました。 

小中学校の96%超、利用始まる?

今の子どもたちはICTを使いこなすことが当たり前の時代を生きるという前提に立てば、端末が来たら先生も子どもたちも徐々に慣れていき、どんどん使うことが求められます。