2021年5月、大阪市の教育行政を批判する「提言書」を実名入りで出した公立小学の校長先生を覚えていますか? コロナ禍の緊急事態宣言中、小中学校の学習を「オンラインが基本」とした松井一郎市長の判断を「子どもの安全・安心も学ぶ権利もどちらも保障されない状況をつくり出している」と指摘したのが、当時、市立木川南小学校長だった久保敬さん(61)でした。昨年3月に定年退職して現場を離れた久保さんはいま、学校や社会の現状をどう見ているのでしょうか。思いを寄稿していただきました。

久保 敬(くぼ・たかし)
1961年生まれ、61歳。1985年大阪市立小学校教員。2022年3月末、木川南小学校長を最後に定年退職。2022年4月に「フツーの校長、市長に直訴!」(解放出版社)を出版。現在、近畿大学非常勤講師、公益社団法人全国人権教育研究協議会事務局員、特定非営利活動法人School Voice Project理事、一般社団法人ひとことつむぐ理事。2008年より月刊誌「ヒューマンライツ」(編集発行:一般社団法人部落解放・人権研究所)に4コマまんが「ガッツせんべい」を連載。お笑いコンビ「かまいたち」の濱家隆一さんが小学生の時の担任だったことでも知られる。

教師はやっぱり“いい仕事”だ!

2021年4月、松井大阪市長が突然、記者会見で全面オンライン授業実施を表明したことをきっかけに、市長と教育長宛てに出した「提言書」がインターネットで広がりました。思ってもみなかった反響が全国だけでなく、海外からも寄せられ、新たな出会いやつながりが生まれています。平凡な定年退職を迎えるはずだったのに、何が起こるか分かりません。不本意ながら「文書訓告」なるものをいただくことになりましたが、「人生って面白い!」と思わずにはおれません。

久保さんが木川南小学校長の時に出した「提言書」の全文

「提言書」を出すに至った詳しい経緯、そこに込めた思い、その後の反響、教員としてのこれまでの体験などをまとめ、2022年4月に「フツー校長、市長に直訴!」(解放出版社)を出版しました。その本の帯に、前川喜平さん(元文部科学事務次官)が「やっぱり教師はいい仕事だ、文部官僚よりずっといい」と書いてくださいました。正直「辞めたい」と思うこともなかったわけではありませんが、37年間の小学校教員生活は本当にやりがいのある“いい仕事”だとつくづく感じています。