マスクの着用やワクチン接種の必要性にいろいろな考え方があることがわかってきたように、コロナ禍に見舞われたからこそ偏見や多様性というものが身近な問題として理解しやすくなった、と言うのは、全盲の和太鼓奏者にして視覚特別支援学校の非常勤講師でもある片岡亮太さん(38)です。どんな思いを持って活動や教育にあたっているのでしょうか。

片岡亮太(かたおか・りょうた)
和太鼓奏者、パーカッショニスト、社会福祉士、筑波大学附属視覚特別支援学校音楽科非常勤講師、静岡県立沼津視覚特別支援学校学校運営協議員。弱視で生まれ、10歳の時に失明、11歳の時に盲学校の授業で和太鼓と出会う。2007年に上智大学文学部社会福祉学科を首席で卒業し、同年からプロ奏者として活動。11年、ダスキン愛の輪基金「障害者リーダー育成海外研修派遣事業」第30期研修生として1年間単身ニューヨークで暮らし、ライブパフォーマンスを披露する傍ら、コロンビア大学内の教育学専攻大学院ティーチャーズ・カレッジで障害学を学ぶ。現在、国内外で演奏や講演、指導に当たる。

♪さあさあ行こうぜ、もう止まらない、もっともっともっとドンドン羽ばたけ!♪
♪右!左!ポーンとスキップしてっ!♪
♪すみません!少しテンポおとしたスターウォーズ?♪

これらは全て、私がこれまでに和太鼓の指導の中で使用したことのある、リズムの語呂合わせの一例です。

和太鼓を中心に、様々な国の打楽器を用いた演奏で国内外の舞台に立つプロ奏者、弱視で生まれ10歳で失明した全盲の視覚障害者であり、国家資格を有する社会福祉士でもあるという独自の側面を生かして、私だからこそ感じ、経験できたことや社会への思いなどを講演や執筆を通じて伝える活動を始めて今年で15年。盲目の音楽家は古今東西、様々な方がいますが、和太鼓のプロは現状では私だけ。さらに、活動開始当初から演奏と言葉の発信の二本柱で表現しているミュージシャンもごくまれです。

マイノリティー中のマイノリティーと言っても過言ではない立ち位置でありながらも、15年間ずっと歩みを止めずにいられているのは、活動を支え、背中を押してくださる方が多数いるからであると、年を重ねれば重ねるほどに実感します。そんな私にとって、近年、舞台での演奏や講演と同等に注力している取り組みの一つが、複数の視覚特別支援学校や聴覚特別支援学校などでの指導です。

全身駆使し運動、和太鼓ならでは

とりわけ、筑波大学附属視覚特別支援学校の音楽科では、日頃、音楽大学への進学を目指しクラシック音楽を中心に勉強している生徒たちと、週に1度、2時間の授業で、毎週のように汗だくになりながら、基礎体力作りや稽古に励んでいます。全盲、弱視を問わず、視覚に障害がある場合、日常的に全身を使った運動をしたくても、大小さまざまなサポートや、安全な環境の確保が必要になることが少なくありません。