教員不足は今、学級担任が空きそうになるほど深刻化し、教員採用試験の受験者数も減少傾向です。長時間労働やの実態が明らかになるにつれ、教員という仕事は新卒者の進路として敬遠されているとみられます。そんな中、教職志望の学生や若手教員の声に耳を傾け、支えようと活動してきたひとつが、学生団体の「Teacher Aide」でした。団体を立ち上げた大学院生、じんぺーさんが「教職のミライ」をシリーズで語ります。

じんぺー 
本名は櫃割仁平(ひつわり・じんぺい)。1995年生まれ。京都教育大学卒業後、京都大学大学院教育学研究科に進学し、心理学を研究する。京都教育大在学中の2018年に学生団体「Teacher Aide」を立ち上げ、全国36支部約340人のメンバーとともに、共同代表として各地の教員志望の学生と連携してイベントなどの活動を精力的にこなす。オフィシャルサイトはこちら。フォロワー数9100人のTwitterやInstagramなどでも発信中。

10年目指した教員になれなかった

現在、博士課程の大学院生として研究をしていますが、学部生の頃は京都教育大学に在籍し、教員になることだけを目指して勉強していました。ありふれているかもしれませんが、きっかけは中学生の時にお世話になった先生の影響です。何でもない授業も常にとても楽しそうにやっていたし、体育祭や文化祭といった特別な行事の際には、生徒と一緒になって喜んだり、悔しがったりしてくれる先生でした。「この先生かっこいい!こんな楽しそうに働ける仕事が自分にも合っているかもしれない!」と思ったのです。それから大学4年生までの約10年間、教員になることを夢見ていました。

転機は思いも寄らぬところにありました。大学3年生の終わりに1年間休学して、ニュージーランドに留学しました。夢は中学校の英語教員だったので、1年くらいは英語ネイティブの国に身をおいて、英語を磨きたいと思っていたからです。そうです、全ては教員になるために選んだ行動でした。しかしながら、実際に他国の学校で教員に話を聞いたり、保護者に話を聞いたりする中で、それまで自分の中にあった「学校」や「教育」のイメージがいい意味で崩壊していくことに気づきました。

実習中のじんぺーさん
小学校での教育実習中のじんぺーさん=2016年6月、京都市、本人提供

特に気になったのは、教員の働き方やライフスタイルです。あちらで見てきた教員たちは基本的に残業をしません。午後3~4時に退勤する方も多く、子どもより早く帰ることもあります。年に数回ある2週間程度のホリデーの時は、しっかり休み、家族で海外旅行などをしていました。色々な要因が絡み合って日本との違いがあることは承知していますが、一つだけ面白いと思った事例を挙げると、ニュージーランドには「Teacher Aide」という仕組みがあり、保護者や地域の人が放課後など人手の足りない時間に学校に行き、子どもを見たり、丸付けをしたりなど、教員の業務のお手伝いをします。