連続講座の特別講師も務めた永田教授は、社会に不満や不安を持ちつつも内向的な日本の子ども・若者の傾向に触れた上で、教室で学ぶSDGsの価値観を学校生活で実践する「ホール・スクール・アプローチ」(Whole School Approach)を紹介した。
答えのない問いを持ち、仲間や先生と共有
学校がエネルギーや食などさまざまな切り口から気候アクションに取り組むことで「地球規模の問題に良い意味で敏感になれる」とし、「子ども一人ひとりが立ち止まって答えのない問いを持ち、仲間や先生と共有し、アクションを起こしていく実践が必要です」と指摘した。
気候変動の授業案作りは、教員自らがSDGsの観点を採り入れた教育などを学ぶ朝日新聞の「先生のための勉強会」の連続講座で進めてきた。海外を含む各地の教員と保育園長の計11人が、小、中、高校の3学校種ごとに話し合いながら作った。
3人で組んだ保育園・小学校チームは、東京都大田区立相生小学校の茂木正浩先生が4年生を対象にした授業案を代表で発表した。地球温暖化がもたらす影響や自分たちでできることについて、家族との対話につなげ一緒に行動を起こしてもらおうと、保護者向けの発表会を計画したことを紹介した。
動画制作や「地球環境憲法」も
中学校チームでは3人が登壇した。群馬県立中央中等教育学校の西村吉史先生は、自ら作った気候変動教育のための教材をもとにワークショップを開き、気候危機に対して個人でできるアクションを考えるとともに、みんなのアクションを促すための動画を生徒たちに制作してもらう授業実践を紹介した。西村先生自らも作品をSNSに投稿して広めたという。
最多の5人からなる高校チームでは、環境問題を自分たちの問題としてとらえられるよう、班ごとに分担して「地球環境憲法」の作成に取り組む授業(新潟県立津南中等教育学校の小野塚正行先生)、SDGsに関連したテーマで自分たちでストーリーを考えた紙芝居を作成・発表する授業(埼玉県立幸手桜高校の牛久保聡先生)などの事例が報告された。
授業に取り組んだ後、子どもの意識調査をすると「自分は社会の一員で、何かできることがある」に肯定的な回答が多数を占めるなど、子どもたちの価値観が変容したことをうかがわせるケースも見られた。
企業のSDGs教育の取り組みとして、UCCホールディングスは「コーヒーから考えるSDGsオンラインセミナー」、三井物産は「『サス学』アカデミー」について、それぞれ紹介した。
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気候変動の授業案は後日、改めて当サイトで紹介する予定です。
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