学校の教育内容が過剰な「カリキュラム・オーバーロード」と呼ばれる昨今の状況をめぐり、現役の学校教員が報告し合うオンライン講演会「学校の時数をどうするか––現場からのカリキュラム・オーバーロード論」が10月28日に開催されました。参加した教員は、子どもにも教職員にとっても現状は負担が大きく、学校に余裕がなくなっているとして、学校が教育課程を編成する基準である標準時数を学習内容とともに削減すべきだ、と訴えました。
講演会は東京学芸大学が主催。まず同大学現職教員支援センター機構教授の大森直樹さんは、これまで複数の研究者がカリキュラム・オーバーロードを問題視してきたが、その主張の多くは教育内容の過剰さに関するもので、「標準時数の変遷が子どもの生活に与えた影響」という視点が欠けていたことを指摘した。
標準時数とは文部科学省が省令で定める教育課程の編成基準の一つで、学校はこの時数を下回らないように教育課程を編成する。大森さんは、現在までの標準時数の推移を紹介しながら、子どもへの負担が年々増していることを次のように指摘した。
※○○年の省令改正に基づく標準時数を○○標準時数と表記します
「文部科学省では、おもに総時数の変遷に着目してきました。小学5年生を例にとると、1968標準時数では年間総時数1085(週31)コマだったものが、1977標準時数では年1015(週29)コマ、1998標準時数では年945(週27)コマに削減されました。その後、ゆとり教育との批判を受けたことで、2008標準時数では年980(週28)コマ、2017標準時数では年1015(週29)コマへと再び増加に転じています」
「一見、1968年より2コマ少なくて1977年と同じレベルのように見えますが、この数字を額面通りに受け取ることはできません。まず、時期によって特別活動のカウント方法が異なっていることを考慮しなければなりません。実際には、いつの時代でも年間約70コマの特別活動が行われていることを踏まえると、特別活動を年35コマとカウントする文科省の方針は、標準時数を現実よりも過小に見せていることになります」
また、たとえ標準時数が同じでも、それを5日でこなすのと6日でこなすのとでは、子どもへの負担が違う点も見過ごせないと付け加えた。「週6日だった1977年当時と週5日の2017年では、1日あたりの授業時間が違うため、子どもへの負担が確実に増えています。平日1日あたりの時数は1989年以降増加し続けており、2017標準時数は5.6コマで、過密といわれた1968標準時数の5.5コマをも上回っています」