公立学校に関する首長と教育委員会の権限分担はどのようになっているのでしょうか。教育長と、教育委員・教育委員会との関係はどうでしょうか。一昨年、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために全国的に学校の一斉臨時休校(休業)が行われましたが、休校の実施などの決定権限がどこにあるのかも述べてみたいと思います。

地教行法改正による首長と教育委員会の権限分担は

地方教育行政における責任体制の明確化、地方公共団体の長と教育委員会との連携の強化等を行うものとして、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下、「地教行法」という)が改正され、教育委員会制度の見直しが2015年4月1日から施行されています。

改正の目的は、「教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保しつつ、地方教育行政における責任体制の明確化、地方公共団体の長と教育委員会との連携の強化等を行うもの」とされています。具体的には、首長が招集する総合教育会議と首長が議会の同意を得て直接任命する教育長を通じて、首長の教育への関与を拡大するものです。また、首長は、総合教育会議を招集して、教育に関する施策の大綱を定めることになりました。

ただし、教育の政治的中立性を担保するために、引き続き、執行機関として合議制による教育委員会制度が残されました。教育に係る首長と教育委員会の権限関係は、首長に新たに大綱の策定に関する事務が加わったものの、地教行法の改正前と変更はありません。

首長と教委の権限分担

大綱に書かれる内容

文部科学省通知(2014年7月17日 文科省初等中等教育局長)で次のようにされています。

「大綱の主たる記載事項は、各地方公共団体の判断に委ねられているものであるが、主として、学校の耐震化、学校の統廃合、少人数教育の推進、総合的な放課後対策、幼稚園・保育所・認定こども園を通じた幼児教育・保育の充実等、予算や条例等の地方公共団体の長の有する権限に係る事項についての目標や根本となる方針が考えられること」地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律について(通知)

大綱の法的位置づけ

地教行法において、次のように規定されています。
第1条の3
地方公共団体の長は、教育基本法第17条第1項に規定する基本的な方針を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体の教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱を定めるものとする。
第1条の3第2項 
地方公共団体の長は、大綱を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらか じめ、総合教育会議において協議するものとする。
第1条の3第4項 
第1項の規定は、地方公共団体の長に対し、第21条に規定する事務を管理し、又は執行する権限を与えるものと解釈してはならない。
第1条の4第2項
総合教育会議は、地方公共団体の長及び教育委員会により構成する。

第1条の3第4項の規定は、大綱は首長が定めるものとされていますが、この首長の大綱策定権限は、教育委員会の権限に属する事務の管理、執行権を首長に与えたものではないということを表しています。新設された総合教育会議も、首長と教育委員会という対等な執行機関同士の協議・調整の場となっています。