法改正の背景
教員免許更新制の経過
2000年、当時の森喜朗首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」が教員免許更新制の導入を提言しました。その後、中央教育審議会(中教審)は、不適格教員を排除させる仕組みとして検討しましたが、02年の答申で「更新時に教員の適格性を判断する仕組みは制度上取り得ない」と見送られました。しかし、2年後「教員の資質向上のため」として再び諮問され、06年の中教審答申で免許更新制の導入が決まり、09年からスタートしました。当時、「自民党の目的は不適格教員の排除だったが、それでは制度化できないから教員の質の確保策に趣旨を変えた」とも言われています。
教員免許更新制は、10年ごとに30時間以上の講習を受けなければ教壇に立てなくなるものです。更新期限を忘れたために教職を失う「うっかり失効」が生じたこと、教育委員会などの研修と内容が重なるとの指摘が上がっていたことのほか、ただでさえ長時間労働が問題となっている教員が自費で受ける講習は負担増に拍車をかけているとの声などもあり、教員・教育関係者から疑問や廃止を求める声が多く上がっていました。最近では、18年12月、全国都道府県教育長協議会が中教審の学校における働き方改革部会に出した意見書の中で、「教員免許更新制の大幅な縮小や廃止も含めた検討」を要請しています。
こうした中、昨年3月に萩生田光一・前文部科学相が「制度の抜本的な見直し」を中教審に諮問し、中教審の審議を経て今回の廃止となりました。
代わりに研修の記録と指導助言を義務化
免許更新制を廃止する代わりに、新たに、教員ごとに研修の記録を作成することと、個々の教員の資質向上に関して校長が教員に指導助言を行うことが法律で義務化されました。校長も研修記録が義務付けられ、校長への指導助言者は市町村教委(県立学校は県教委)の教育長となります。
文部科学省は、免許更新制の下での10年に一度の講習は、常に最新の知識、技能を学び続けることと整合的でないことや、座学を中心とした講習では現場に即した学びの実施が困難といった課題があったので発展的に解消するとし、その上で、一人ひとりの教員が、研修履歴の記録の状況を踏まえ、客観的に現在の姿を自覚し、将来の姿を適切に設定できるよう、研修履歴などを手がかりとした管理職との対話や研修の奨励が確実に行われるべきであり、このような主体的で個別最適な学びが教員自身の成長につながるとしています。
免許の失効者や休眠状態の免許状はどうなる
旧免許状の取扱い
教員免許更新制が導入される前の09年3月31日以前に授与された免許状(旧免許状という)は、有効期限の定めのないものです。