2020年春以降、学校現場は様々な場面で、新型コロナウイルスの影響を受けてきました。飛沫(ひまつ)による感染リスクが高いとして、特に大きな制約を受けたのが、合唱や吹奏楽といった音楽の分野です。影響を最小限に食い止める方法が各校で模索される中、「GIGAスクール構想」で子ども1人に1台ずつ導入されたタブレット端末を使って、音楽の授業づくりを工夫した先生がいます。横浜市立東戸塚小学校教諭の小杉啓司先生です。

コロナ禍で合唱・管楽器演奏難しく

感染防止対策のガイドラインに「室内で児童生徒が近距離で行う合唱、管楽器(鍵盤ハーモニカやリコーダーなど)の演奏は実施を見合わせること」との規定があるため、音楽の授業はこれまで、カリキュラムの変更や各種コンクールの中止・延期を余儀なくされました。こうした中、小杉先生は、担任する小学1年生のクラスで感染リスクを軽減するため、タブレット端末を活用した音楽の授業を行うことを考えました。

通常であれば、入学したての小学1年生はまず友だちとのふれあいの中で、学習を深めたり関わりを広げたりして、学校生活に慣れていきます。しかし、コロナの影響でふれあうための大切な多くの活動が妨げられました。学びを止めないためにはどうすればよいかと考えた末のアイデアでした。

授業は、21年10月に「こんにちは けんばんハーモニカ」という2時間扱いの単元で実施しました。鍵盤ハーモニカの代わりに、1人1台ずつ整備されたタブレット端末にインストールしたピアノアプリを用いて行いました。端末を使いこなす能力も育みたいとの思いから、アプリをインストールするところから子どもたちに体験させました。タブレット端末を使うこと自体が楽しいという面もあり、喜んで取り組んでいたそうです。また、音色がグランドピアノのものだったため、本物のピアノを演奏している気分で、音楽を楽しめる貴重な体験になったようです。

工夫した点は?小杉先生に聞く


タブレット端末を活用した経緯、授業を進める上で工夫した点などについて、小杉先生に聞きました。

――音楽の授業にタブレット端末を活用しようと考えた理由は?

小学1年生の音楽科では、鍵盤ハーモニカの演奏がカリキュラム上の大きな要素です。それができないとなると音楽の授業自体が成り立たなくなってしまいます。悩んだ末に、タブレットのピアノアプリを活用すれば、吹くという行為がなくなり、飛沫リスクも抑えられるのではないかと考えたのです。学校には「GIGAスクール構想」によって1人1台の端末が整備されていました。複数人で一つの端末を共有する必要もなかったため、接触感染の心配もなく実施できました。

――アプリをインストールさせるところから子どもたちに取り組ませたそうですね。

初回の授業で、①タブレット端末のホーム画面を開く ②「Self Service」(※学校教育用のアプリストア)から使用するアプリを探す ③アプリをインストールする ④インストールしたアプリを起動する、という手順で学習準備を整えました。
当初は、あらかじめ学校側で各端末にアプリをインストールしておくことも考えていました。しかし、「GIGAスクール構想」の観点から、「端末を使いこなす能力」を育むことも重要だと考え、インストールするところから、子どもたち自身に挑戦してもらいました。

――タブレット端末に不慣れな子どもにはどのように対応したのですか?