生徒の私有端末を持ち込んで使うBYOD(Bring Your Own Device)にスマートフォンで取り組んでいる千葉県立検見川高校(千葉市美浜区)。活用の場は、オンライン授業などの学習や事務連絡にとどまりません。今年度の文化祭では、生徒どうしの情報交換や映画制作にICT(情報通信技術)が大活躍しました。後編では、文化祭で生徒たちがどんなふうに端末を生かしていたかをお伝えします。   

 

検見川高校の文化祭「潮風祭」は7月の夏休み前に開かれた。これまで3年生はクラスごとに演劇を披露するのが恒例だったが、新型コロナの感染拡大のため、昨年度は文化祭そのものが開かれなかった。今年度は劇から映画に変更され、それぞれ20分間の作品を作ることになった。 

「金八先生」の設定借り映画に

同校では「GIGAスクール構想」のスタートに先立つ2020年4月、全教室などに独自の校内回線が整備されるとともに、生徒が自分のスマートフォンを持ち込んで自習や校内での連絡に利用する取り組みも同時期に始まっていた。

3年B組の映画作品は、文化祭準備中の学校が舞台だ。3人の不良生徒は暴れて装飾を壊しただけでなく、ダンスを披露するはずだった生徒にけがをさせ、当日の発表が難しい状況に陥る。そこへ「金八先生」が現れて不良生徒を指導し、改心したその生徒はけがをした生徒に代わってダンスを披露する――。シリーズ化された人気テレビ番組の設定を借りた、オリジナルの物語だった。

高埜さんと赤松さん
高埜樹姫さん(左)と赤松愛美さん

どんな映画を作るか、4人の文化祭委員が中心となって考え始めたのは1学期に入ってまもなくのこと。ただ、コロナ禍が続き、放課後に集まるわけにはいかない。コミュニケーションツールの「Microsoft Teams」(マイクロソフト チームズ)を活用し、スマホを通じてやりとりすることにした。放課後、自宅などで過ごす友だちどうしがつながり、何をやりたいか話し合った。 

ITツールで議論し意見集約

五つくらいに絞った候補からみんなで優先順位を付けるのにも、同社のアンケート作成ソフト「フォーム」を使った。ジャンルなどが他のクラスと重ならないよう生徒会で調整し、5月の初めには「金八先生」に決まった。

一人ひとりの役割もフォームで希望を聞いて決めていった。大道具は希望者が多かったがキャストは少なく、文化祭委員が調整に入った。台本は、引き受けてもいいという6人で大まかなストーリーを考え、分担して書いたものを突き合わせて不自然なところを修正した。「完成させるのに精いっぱいだった。でも、楽しんでもらえる作品になるように全員が協力してくれた」。文化祭委員の1人、高埜樹姫(きき)さん(18)は話す。

3年B組の生徒
3年B組の生徒ら。文化祭の準備の合間に=千葉市の県立検見川高校

撮影に入ると、写真部員がビデオカメラで撮る映像だけでなく、大事な場面ではいろんな角度から撮った映像を組み合わせようと、スマホのカメラも駆使した。メーンのビデオカメラ1台に、文化祭委員らのスマホ2台の計3台を使った場面もある。

最大のヤマ場は、男子生徒たちがBTSの「Dynamite」を踊るシーン。何度やってもだれかにミスが続いた。文化祭委員の赤松愛美さん(18)は「20回くらい撮り直ししたかもしれない」と明かす。新体操の経験があり、ダンスの指導役の赤松さんにすれば、「最初は、どうしようという感じ」。撮影スケジュールぎりぎりのタイミングで、何とかそろうようになった。 

音源差し替え、タイミングぴたり

編集はパソコン、スマホの両方で行った。作品をまとめる責任者だった高埜さんは、主にスマホで「InShot(インショット)」、「CapCut(キャップカット)」などの動画編集アプリを使い、気に入った画像を切って組み合わせたり、明るさに変化を付けたりした。「こういうアプリを使ったのは初めて。でもスマホは普段から使っているし、操作自体は難しくないので、やっているうちに慣れてきた」と言う。

映画の場面(ダンス)
映画の中で生徒たちがダンスを披露する場面=千葉県立検見川高校提供

挿入歌は著作権法上、原曲の音源をそのまま使うことはできない。このため赤松さんらがピアノで演奏し、撮影時に使った原曲と後で差し替えた。ピアノの音色と、それに重なるダンスの映像。編集を重ね、ぴたりと合った時には「やったー、みたいな感動がありました」と赤松さん。5月中旬に撮影を始め、編集も同時進行させて6月末には完成にこぎ着けた。高埜さんは「20分間に収めるために、不要なところを探してそぎ落としていくのが大変でした」と振り返る。

コロナ禍の中、開かれた今年の「潮風祭」は外部への公開は見送られ、自分たちだけで楽しむ形式になった。「せっかく何日もかけて作ったので、検見川高校に来たいと思っている中学生たちなどたくさんの人に見てほしかった」と2人は少し残念そう。それでも昨年度の中止に比べれば、開催できる喜びはひとしおだ。クラスでの話し合いなど、これまでなら実際に集まらなければできなかった多くの作業をオンラインで実現し、学校生活のさまざまな場面にICT活用を広げる貴重な経験ができた、とも思っている。

映画の場面(金八)
教壇に立つ金八先生。映画の一場面=千葉県立検見川高校提供

学校でのICT活用をさらに推し進めようと、検見川高校は来年度の新入生から、保護者負担でタブレット端末を導入することを検討中だ。