「GIGAスクール構想」で、全国の公立学校に一律で1人1台端末を整備する対象とならなかったのが高校でした。都道府県などが整備の費用を負担した地域、保護者が負担した地域などのほか、整備するかまだ検討中という県もあり、千差万別です。個人の端末を学校で利用するBYOD(Bring Your Own Device)をスマートフォンで実施している千葉県のある県立高校の取り組みを2回にわたってお伝えします。   

 

千葉市美浜区の県立検見川高校は、GIGAスクール構想に先駆けて独自の回線をすべての教室や図書室などに整備し、2020年4月から使えるようになった。これを生かして全校あげて始めたのが、予備校講師の授業を視聴できる「スタディサプリ」の活用だ。授業を補う学習と位置づけ、始業前の毎朝10分間、生徒は自分のスマホを接続して視聴している。1人約6千円の費用は保護者に負担してもらった。 

自分のスマートフォンでスタディサプリなどの朝学習に取り組む生徒たち=千葉県立検見川高校提供

「スタサプ」学校でも家庭でも

予備校に通う生徒がテキストを取り出して勉強する自習時間も、通っていない生徒が手持ちぶさたにならなくなり、学ぶ機会の差が縮まったように感じている教員もいる。校内なら通信料を気にせずに勉強できるが、家庭でも使っている生徒は多いという。

学習だけではない。ビデオ会議やファイル共有ができるコミュニケーションツール「Microsoft Teams」(マイクロソフト チームズ)を通じ、平日の朝8時ごろにはホームルームの連絡事項を生徒に配信している。その作業は学年の担当教員が行うが、共同編集ができる入力にはより多くの教員が関わる。行事に関する係の招集、模擬試験の申し込みのお知らせ、小テストの予告など、内容が学校生活全般にわたるためだ。生徒にとっては、こうしたことを把握した上で午前8時35分に始まる朝のホームルームを迎えられることになる。

スマートフォンは調べ学習でも使われている=千葉県立検見川高校提供

連絡事項を共有できるメリットは、教員にとっても大きい。朝の教員間の打ち合わせはホームルーム前の8時20分に始まるが、これまでは互いに説明するのに時間がかかって後ろにずれ込み、ホームルームの開始時間を過ぎてしまいがちだった。配信を始めてからは遅れがほぼ解消され、生徒に向き合う時間が確保できるようになったという。 

教員にも情報共有のメリット

チームズでのメッセージ配信は、クラスや学年全体、全校一斉などのほか、たとえばある選択科目を取っている生徒と担当教員だけのチームを作って対象を絞ることもできる。この仕組みを使って提出物を出す期限を知らせる、授業の予定変更を伝えるといった連絡も教科ごとも頻繁に行われる。生徒のスマホ利用について、授業の際に不要な操作をしないよう指導する以外に制限せず、自主性に任せているからこその利用法でもある。