いま、ネットいじめが増加傾向にあると言われています。ネットいじめの特徴や傾向について、2015年と20年に京都府と滋賀県の高校生を対象に大規模な調査を行った研究グループを主導した佛教大学の原清治教授(教育社会学)に聞きました。

「私は知らない」はダメ

――ネットいじめの現状について教えてください

その前に一つ、大事なことをお話ししておきます。このインタビューは先生たちが読んでいるのですよね? 先生方からよく「ネットいじめは見えない」とか「指導しづらい」という声を聞きます。確かに子ども達のLINEの中などをのぞくことはできないので、直接指導しづらいのは、その通りだと思います。

ですが、「先生はネットのことをよく知らないので、君たちが自主的に管理しなさい」とか、「オンラインゲームは詳しくないので、君たちの主体性に任せるよ」というような言い方はしないでください。実は、そういうクラスにこそ、いじめやネットいじめ、オンラインゲームのトラブルが頻回に起きています。子どもたちからすると、「私は知らない」と、先生が言った瞬間に子どもたちが独占できる遊び場になってしまいます。

これまで教育の世界は、先生が先を走り、後から子どもたちが追いかけてくる構図でしたが、デジタルでは全くの逆になっています。先に子どもたちの実態があり、それを先生と親たちは後ろから追いかける形です。これは教育の世界で初めての経験です。だからこそ、我々が予見できないことが起きるという意識を持ってください。

――それでは改めて、ネットいじめの現状を教えてください

今回の調査は2020年11月~21年3月の間に、京都府と滋賀県の高校132校(約6万3700人)を対象に実施したものです。高校でのネットいじめ発生率は8.7%で、5年前に行った同様の調査よりも3.5ポイント増えていました。一方で、リアルでのいじめとの関係を見てみると、20年は「ネットいじめ」と「リアルでのいじめ」の相関係数が5年前に比べて強くなっており、リアルでいじめられている子は、ネット空間でもいじめられている状況が生まれていることがわかりました。

いじめのイメージ画像

「リアルでのいじめ」が全盛の時代であれば、学校でいじめられても家に帰れば安心できた。ですが今は、学校でもいじめられ、家に帰ってきてもネット上でからかわれるのです。被害に遭っている子からすれば、365日24時間追いかけられている状態です。自分の身を隠す場所がないということですから、当然、どんどん追い込まれていく構造にあります。

5年間でオンラインゲームが台頭

――この5年間でネットいじめの世界にどんな変化があったのでしょうか?

重要な要素として言えるのは、子どもたちが使うツールが変化したことです。ネットいじめに使われたツール(複数回答)をみると、5年前はツイッター51.8%、LINE39.7%、メール18.4%といった形でした。当時ツイッターで「裏垢」(裏アカウントの意味)が話題となった時期です。子どもたちは日常的に使うアカウントとは別に裏アカウントを作り、表と裏の顔を使い分けていました。しかし、裏アカウントの危険性が啓発されてきたことで、その被害は減っているように見られます。