教職員のみなさん、新学期が始まり、授業の計画と準備、学級経営方針や個別支援計画、そして子どもや保護者との信頼関係の構築など、新年度の慌ただしい状況が続いていることと思います。子どもにとっても教職員にとっても最初が大切ですが、限界を超えた頑張りで健康を損ねないようにご留意ください。それは単に個人の健康問題だけでなく、日本の将来を担う子どもたちへの教育の基盤に関わる問題です。
精神疾患による休職高止まり
毎年12 月に文部科学省が公表する調査によると、教員の精神疾患による病気休職者数の割合は、1991年からの 20 年間で 5 倍を超え、その後の約 10 年間は高止まりの状態が続いています(グラフ)。また、2020年度の出現率は0.56%となっていますが、これは教員178 人に1人の割合です。
さらに、1カ月以上の病気休暇取得者を含めると出現率は 1.03%となり、実に97人に1人の割合となります。しかし、これらは氷山の一角だと私は考えています。短期の病気休暇や年次休暇で何とかしのいでいるみなさんも多いことでしょう。教員のメンタルヘルスの状況はますます非常に厳しい状況にあるといえるでしょう。
小中とも平均で過労死ライン超す
この厳しい状況の背景には、教員の就労状況があります。文科省が16年度に行った教員勤務実態の報告書によると、小中学校教諭の1週間当たりの実質的な労働時間は、小学校では62時間11分、中学校では67時間20分でした(表)。これは、1週間の正規勤務時間(38時間45分)に対して、小学校で23時間26分、中学校で28時間35分の超過勤務をしている計算になります。
さらに、単純に4倍して4週間(1カ月弱)でみると、それぞれ93時間44分、114時間20分の超過勤務となります。これは、小学校・中学校の教員の平均超過勤務が、過労死ライン(1カ月当たり80時間を超える時間外労働)を超えているということです。
このような深刻な状況では本来、教育制度や職員配置の態勢、職場環境の抜本的な改善のほか、職務内容を精選することで多忙化を回避する施策が必要不可欠です。しかし、これらが遅々として進まない状況においては、心身の健康保持のためだけではなく、自らの人生を守るためにもセルフケアに取り組む必要性があります。
簡単なリラクセーション(リラックスする方法)によって、 ストレスモードをオフにし、リラックスモードをオンにすることで、私たちの心身は恒常的ストレスに対する「受動的モード」から、ストレスに対処する「積極的モード」に切り替わります。つまり「ストレス反応が蓄積するモード」から「ストレス反応を解消するモード」への変更です。これは短時間でも効果を発揮します。
そこで、提案です。1日1回、勤務時間内に5分間程度のリラックスタイムを設定しましょう。取り組む環境と姿勢の調整に2分、リラクセーションの実施と切り替え動作に3分です。
リラックスタイムを設定した先生方からは、「スッキリする」「気分転換ができる」「疲れが軽減する」「集中・能率が上がる」「客観的な思考ができる」「冷静な判断と対処ができる」「もうひと頑張りできる」といった感想が続々と寄せられています。
また、現職教員と教職を志望する大学院生が主な受講生である大学院での授業実践の結果、リラクセーションを習得すると精神的不安が軽減され、平穏な日常生活を送ることができ、メンタルヘルス不調の大きな要因となる不安を持つ傾向が改善されると確認されました。この授業実践は、受講者自身がリラックス上手になるとともに、子どもがリラックス上手になることを支援できるようになることも目的としています。
では、実際に体験してみましょう。