教員を「能力」と「業績」で評価する「教員評価システム」が抱えている課題について、文部科学省の研究費助成を受けて調査報告を行った杉浦健・近畿大教育部教授(教育学)に聞きました。インタビュー後編では、事例や現場からの声を基に教員側、管理職側が抱える悩みについて語っていただきました。

 潜むパワハラのリスク

――大阪府教委のアンケートからは、教員の側の評価システムに対する不満が見えたとのことですが、本来は意欲を引き出すための制度が、なぜ受け入れられないのでしょうか?

「教員評価システム」は、教員の「能力」と「業績」を管理職である校長や教頭が評価する制度ですが、学校現場は民間企業とは異なり、能力と業績を示すデータが乏しいことが課題だとされています。そのため、評価者の裁量に委ねられている部分が多くなってしまっているとも言えます。

例えば生徒の「自律」と「規律」、どちらに重きを置くかを考えてみてください。どちらにも尊重すべき点がありますが、交わるとは言いがたいですよね。学力を一つの物差しにしてもテストの点数を重視した勉強に力を入れる先生もいれば、生徒の探求力を伸ばそうとする先生もいます。さらに他の教師のサポートなども、教員の仕事に含まれています。

そうした教員の取り組みの一つひとつに対して、見方によっては評価が出来るし、批判も出来てしまうのです。大阪市では、少し前に学力テストを評価に加えるかの議論がありました。一見すると、数字を基準とするので公平にも見えますが、「学力テストに特化した教育はむしろ子どもにマイナスに働く」という議論もあります。

米国の一部では「学ぶ範囲が狭く、内容が浅くなっている」として、こうした勉強方法に反対運動が起こったこともあります。大阪市ではいまも継続して議論が行われているようですが、基準をどこに置くかは、教育そのものの価値観が表れる問題であります。

言い換えれば、確固たる基準が示しにくいからこそ、教員側にとっては「管理職の裁量次第で評価が変わる」という受け止めになってしまっているのです。実際に大阪府の自由記述では「一昨年度の管理職には1ランク上の評価をされていて、それよりも進んだ取り組みをして結果も出ていたのに、管理職が変わっただけでランクが下がった」という声もありました。

東京・霞が関の文部科学省

――評価が管理職の裁量に委ねられている部分が大きく、「正しく評価されていない」という不満につながっているということですね

問題はそれだけにとどまりません。評価に対する明確な基準が示されていない状況下では、教員たちは「管理職に逆らうと評価に影響する」という心理的な重圧を受けています。

こちらも大阪府の調査ですが「このシステムを利用してパワハラを行う管理職が急増していると思います。実際に何度もパワハラを受けました」との指摘や、「意見が合わないときは、評価を下げられた」などの声もあがっていました。

絶対評価なのに「相対評価」

――文科省の調査では、教員評価はほとんどの自治体で「絶対評価」で行われているとされています。努力が正当に評価されれば、不満は生じないように思うのですが

その点が二つ目の課題です。多くの自治体が「絶対評価」を打ち出していますが、評価を給与に反映させているために、実際には「相対評価」での運用となってしまっている実態があります。